
産廃を運ぶのに許可は必要?
建設業や運送業に携わる方なら、一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。
元請、下請、孫請といった立場や、自社で出したゴミか他社の依頼かによって、許可の要否は大きく変わります。
結論から言えば、他人が排出した産業廃棄物を事業として運搬する場合は、原則として収集運搬業の許可が必要です。
判断の基準となるのは「他人性」「廃棄物該当性」「事業性」の3つ。
ただし、自社運搬や専ら物など、許可が不要になる例外もあります。
この記事では、許可が必要なケースと不要なケースの違い、建設業での下請運搬時の注意点、そして無許可営業のリスクまでをわかりやすく解説します。
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産業廃棄物収集運搬許可が必要なケースとは?

結論から言うと、他人が排出した産業廃棄物を、事業として運搬する場合は原則として許可が必要です。
廃棄物処理法第14条では、産業廃棄物の収集・運搬を業として行う者は、都道府県知事等の許可を受けなければならないと定めています。
たとえば、工場から出たプラスチックくずを、運送会社が依頼を受けて処分場まで運ぶ場合、収集運搬業の許可が必要です。
自社で出したゴミを自分で運ぶだけなら許可は不要ですが、他社から依頼されて運ぶなら許可を取得しなければなりません。
産業廃棄物収集運搬許可が必要かどうかの判断基準

産業廃棄物収集運搬許可が必要かどうかの判断は、運ぶ人・運ぶ物・運搬の目的によって異なります。
判断する際は、以下の3つに該当するかどうかが基準となります。
| 判断基準 | 内容 |
|---|---|
| 他人性 | 他人から依頼を受けて運搬するか |
| 廃棄物該当性 | 運搬する物は産業廃棄物か |
| 事業性 | 反復・継続して業として行うかどうか |
たとえば、建設現場で発生したガレキを下請業者が元請業者に代わって処分場へ運ぶケースでは、下請業者は他人の廃棄物を運んでいることになります。
また、建設現場で発生したがれきは産業廃棄物に該当し、下請け業者は事業の一環として廃棄物を運んでいるので事業性があるため産業廃棄物収集運搬業の許可が必要となります。
一方、上記のどれか1つでも該当しない場合には、産業廃棄物収集運搬業許可が不要な可能性が高いです。
たとえば、自社が出した産業廃棄物だったり、運ぶ廃棄物が家庭ゴミだったりする場合です(ただし、家庭ごみの場合には一般廃棄物収集運搬業許可が必要)。
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産業廃棄物収集運搬許可が不要になる5つの例外ケース

産業廃棄物を運搬する場合は、原則として産業廃棄物収集運搬業の許可が必要です。
ただし、すべての運搬に許可が求められるわけではありません。
上記でも解説した通り、許可が必要かどうかは、他人性・廃棄物該当性・事業性の3つの基準で判断されますが、運搬形態や運ぶ物によっては、3つの基準に当てはまらないケースもあります。
当てはまらなければ産業廃棄物収集運搬業には該当しないため、許可を取得する必要はありません。
許可が不要となる代表的なケースは次の5つです。
- 自社で排出した産廃を自社車両で運ぶ「自社運搬」
- 再生利用を目的とする「専ら物(もっぱらぶつ)」の運搬
- 売却益が発生し廃棄物に該当しない「有価物」の運搬
- 製品の買い替えに伴い無償で回収を行う「下取り」
- 環境大臣の認定を受けた「広域認定制度」による運搬
1. 自社で排出した産廃を自社車両で運ぶ「自社運搬」
自社で排出した廃棄物を、自社の車両やリース車で運ぶ場合、許可は不要です。
廃棄物処理法が規制しているのは、あくまで他人の廃棄物を業として運ぶ行為であり、排出事業者が自ら行う運搬は場合は許可の対象外となります。
たとえば、製造工場が自社の製造ラインから出た金属くずを、自社トラックで処分場まで持ち込むようなケースでは、許可なしで運搬可能です。
ただし、自社運搬であっても産業廃棄物収集運搬業許可が不要なだけであって、廃棄物の運搬に関するルールは守られなければなりません。
具体的には、車両の両側面に産業廃棄物収集運搬車等の表示を行うこと、運搬する廃棄物の種類・量・運搬先などを記載した書面を携帯することが義務づけられています。
表示義務や書面携帯義務に違反した場合は、行政指導や罰則の対象となる可能性があるため注意が必要です。
2. 再生利用を目的とする「専ら物(もっぱらぶつ)」の運搬
古紙・くず鉄・あき瓶・古布の4品目は「専ら物」とされており、再生利用を目的とした運搬であれば、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要です。
これらは再生利用が長年にわたって確立されているため、廃棄物処理法第14条第1項ただし書きにより、許可なしでの収集運搬が認められています。
たとえば、古紙回収業者がオフィスから出た段ボールをリサイクル目的で回収・運搬する場合は、この例外に該当します。
ただし、許可が不要になるのはあくまで次の4品目に限られます。
4品目以外の廃棄物を一緒に運搬する場合は許可が必要になるため、専ら物だけを運んでいるかが判断の分かれ目となります。
3. 売却益が発生し廃棄物に該当しない「有価物」の運搬
運ぶものが有価物であれば、廃棄物処理法の適用対象にはならないため、運搬の許可は必要ありません。
有価物とは、不要になったもののうち、金銭的価値があり有償で売却・取引できる物のことです。
廃棄物処理法は廃棄物のみを対象としており、有価物は規制の対象外です。
たとえば、銅くずを買い取り、それを鉄くず業者に運んで売却するような取引は、一般的には有価物の運搬と判断されます。
ただし、売却による利益よりも運搬費用などのコストの方が大きい場合、実態としては処分目的と見なされる可能性があります。
1円で買い取った廃棄物に対して高額の運送料を請求するような場合、形式上は売買契約があっても、実際には廃棄物を処分していると判断されかねません。
そのため、有価物かどうかの判断は慎重に行う必要があります。
売買契約書や取引明細など、客観的に有価物であることを示す書類をきちんと保管しておくようにしましょう。
4. 製品の買い替えに伴い無償で回収を行う「下取り」
新しい製品を販売する際に、同種の古い製品を無償で引き取る「下取り」は、許可が不要となる場合があります(環境省の通知)。
わかりやすい例としては、家電量販店が新しい冷蔵庫を納品する際、古い冷蔵庫を無償で引き取って持ち帰るケースです。
ただし、許可不要と認められるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
特に重要なのが、販売事業者自らが収集運搬するという点です。
運送業者など第三者に委託して運搬させる場合は下取りに該当せず、委託先業者には産業廃棄物収集運搬業の許可が必要になります。
条件を満たさない場合には、無許可の収集運搬と判断されるリスクがあります。
自社の下取りが要件を満たしているか、事前に確認しておきましょう。
5. 環境大臣の認定を受けた「広域認定制度」による運搬
環境大臣の認定を受けた広域認定制度による運搬であれば、収集運搬業の許可は不要です。
メーカーなどが環境大臣の認定を受けることで、自社製品の廃棄物を全国規模で広域的に回収できるようになります(廃棄物処理法第15条の4の3)。
身近な例としては、パソコンメーカーが自社ブランドの使用済みPCを全国のユーザーから回収し、リサイクルするケースが挙げられます。
広域認定制度の主な特徴は以下のとおりです。
つまり、一般の建設業者や運送業者が直接利用する制度ではありません。
ただし、取引先メーカーが広域認定を受けており、その認定の範囲に委託先として含まれている場合には、許可が不要になる場合があります(広域認定制度申請の手引き)。
自社が該当するかどうかは、取引先に確認してみてください。
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【建設業従事者必見】下請・孫請業者が産廃を運搬する際の注意点

建設現場で発生する産業廃棄物の運搬について、下請業者や孫請業者が関わる場合、責任の所在や必要な手続きを正確に理解していないと、知らないうちに法令違反を犯してしまう可能性があります。
実際の現場では、廃材や解体材などを下請業者が運搬するケースは珍しくありません。
ただし、契約関係が元請、一次下請、二次下請と重なっている状況では、誰が排出事業者となり、誰が運搬の責任を負うのかが問題になります。
建設業に携わる人であれば、必ず押さえておくべき重要なポイントといえます。
建設工事の産廃は元請業者が排出事業者となる
建設工事で出る廃棄物について、排出事業者となるのは現場で作業をした下請業者ではなく、元請業者です(廃棄物処理法第21条の3)。
なぜ、元請業者が排出事業者になるのかというと、責任を明確にして、不法投棄などのトラブルを防ぐためです。
建設現場では、元請や一次下請、二次下請といった複数の業者が関わりながら同時に作業を進めることが一般的です。
もし下請業者ごとに排出事業者としての責任を持たせると、どの廃棄物がどの業者から出たのかが分かりにくくなります。
処理に問題があったときに行政が責任の所在を判断しやすくするため、工事全体を管理する元請業者が責任を負う仕組みになっています。
下請・孫請が運搬する場合は原則として許可が必要
下請業者が建設現場の産業廃棄物を運ぶ行為は、法律上、元請業者の廃棄物を運搬することになります。
つまり、廃棄物処理法第14条にある「他人の委託による収集運搬」に該当し、収集運搬業の許可が必要です。
たとえば、下請の電気工事会社が現場で出た電線の被覆を自社の車で処分場まで運んだとします。
この場合、自社で出したゴミだから自社運搬にあたると思われがちですが、法律上の排出事業者は元請業者となるため、下請にとっては「他人の廃棄物」を運ぶ行為に該当します。
そのため、許可を持たずに運べば、法律違反です。
また、現場では次のような誤解がよくあるので注意してください。
上記はどれも、実際には委託による運搬に該当し、許可がなければ違法となります。
下請や孫請として建設現場の産廃を運ぶ予定があるなら、事前に産業廃棄物収集運搬業の許可を取っておく必要があります。
許可不要となる極めて限定的な条件(実務では非推奨)
法律上、下請業者であっても収集運搬の許可なしで産業廃棄物を運べる、非常に限定的な特例もあります。
廃棄物処理法第21条の3第3項では、以下のすべての条件を満たす場合に限り、許可が不要とされています。
ただし、実務でこの特例に頼るのはおすすめできません。
条件が非常に細かく、ひとつでも条件を満たさない場合には無許可営業とみなされるリスクがあるからです。
そのため、実際の現場では、特例の適用を判断するより、最初から収集運搬業の許可を取得するケースが多いです。
判断の誤りによる「無許可営業」の重い罰則リスク

許可が必要であるにもかかわらず、無許可で産業廃棄物を運搬した場合には、企業の存続に関わるほど重大な罰則が科されます。
廃棄物処理法第25条では、無許可営業に対して以下の罰則を設けています。
加えて、行政から事業停止命令や許可の取り消しといった処分を受けるおそれもあります。
知らなかったでは済まされません。
また、建設業者にとって特に深刻なのは、建設業許可への影響です。
無許可営業で拘禁刑の実刑判決を受けた場合、建設業許可の欠格要件に該当し、許可が取り消される可能性があります。
一度取り消されると、刑の執行が終わってから5年間は再取得できません。
産廃運搬の無許可営業が発端で、本業である建設業の継続にまで支障をきたすおそれがある点は注意が必要です。
元請業者も委託基準違反で罰則対象になるので注意
建設工事から出る産業廃棄物の排出事業者は元請業者です。元請が下請業者に産廃運搬を依頼すれば、法律上は委託が成立します。
下請業者が収集運搬業の許可を持っていなければ、元請は無許可業者への委託という委託基準違反を犯したことになります(廃棄物処理法第12条第5項)。
委託基準違反の罰則は、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、あるいはその両方が科されます(廃棄物処理法第25条第6項)。
また、法人の場合は両罰規定により3億円以下の罰金となる可能性があります。
こうした違反は企業の信用を大きく損ない、取引先からの信頼を失うことにもつながります。
たぶん許可は不要だろうという曖昧な判断は非常に危険です。少しでも迷った場合は、事前に専門家に相談することをおすすめします。
許可の要否判定や申請代行を専門家に依頼するメリット

産業廃棄物収集運搬許可が必要かどうか迷ったときは、行政書士などの専門家に相談するのがおすすめです。
自治体ごとのルールや法改正もあるので、自分たちだけで判断するのはリスクがありますが、行政書士に相談することで事前にトラブルを防げます。
また、行政書士に産業廃棄物収集運搬業許可の取得を依頼することで以下のようなメリットもあります。
特に、産業廃棄物収集運搬業の許可は、講習会の受講や車両の準備など、事前に整えておくことも多くあります。
取得までは3〜4か月ほどかかるため、少しでも必要かもと感じたら、まずは産廃許可に詳しい行政書士に相談してみてください。
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まとめ
この記事のまとめ
- 第三者が排出した産業廃棄物を事業として運ぶ場合は産廃運搬許可が必要
- 自社が排出した産業廃棄物を運搬する場合は産廃運搬許可は不要
- 専ら物や有価物を運搬する場合には産廃運搬許可は不要
- 下取りや広域認定制度など特別に認められた場合には産廃運搬許可は不要
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所