古物商の疑問

特定金属くず買受業の届出とは?金属盗対策法をわかりやすく解説

金属くずに関する新しい法律ができたってホント?

金属くずの買取をする場合に新しく届出が必要って聞いたんだけど…

金属リサイクル業や解体業、建設業など、銅線やケーブルを日常的に扱う事業者にとって、2025年に成立した「金属盗対策法」は見逃せない制度改正です。

結論から言えば、盗難リスクの高い特定の金属くずを買い取る場合、新たに「特定金属くず買受業」の届出が必要になります。

従来の「金属くず商許可」は自治体ごとの条例だったため規制に抜け穴がありましたが、今回の法律は全国一律で適用され、違反時の罰則も大幅に強化されています。

つまり、「知らなかった」では済まされない、事業継続に直結する重要な制度変更なのです。

この記事では、特定金属くず買受業の基本から対象品目、他の許可との違い、事業者に課される3つの義務、違反時の罰則、そして届出制度の施行時期まで、実務に必要な情報を網羅的に解説します。

なお、記事執筆時点(2025年12月時点)では届出制度は開始されておらず、制度の開始は2027年6月までに実施される予定です。

そのため、今から準備を進めれば十分に間に合うので、ぜひ最後まで読んで下さい。

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この記事を書いた人

長島 雄太

NAGASHIMA行政書士事務所

NAGASHIMA行政書士代表。古物商専門の行政書士。古物商の許可に関するメディアサイト「古物商許可ナビ」を運営しており、古物商の許可取得実績500件以上。古物商許可の取得率100%。詳しいプロフィールはこちら → [運営者情報]

特定金属くず買受業の届出とは銅などの買受事業を行うための届出

特定金属くず買受業の届出とは、銅線など盗難リスクの高い金属くずを買い取る事業を行う際に、事前に警察署へ届け出る制度です。

従来は、各自治体の「金属くず商許可」を取得していれば金属くずの買い受けが可能でした。

しかし、2025年6月に成立・公布された「特定金属類取引の規制等に関する法律(通称:金属盗対策法)」により、一定の金属類を扱う事業者には新たな届出義務が課されることになりました。

金属盗対策法が成立した背景

この法律が設けられた背景には、金属価格の高騰に伴い、太陽光発電所・電線・通信設備などから金属ケーブルや部材が盗まれる事件が急増している現状があります。

これまでも金属くずの買取については一部自治体では条例による規制が行われていましたが、地域によって制度が異なる上、罰則が軽く、規制のない都道府県へ盗難金属が持ち込まれるなどの問題が発生していました。

こうした課題を受け、国として統一的な規制を導入し、盗難金属の流通を抑制する必要があったことが新法成立の大きな理由となっています。

特定金属くず買受業の対象品目

特定金属とは、「銅その他、犯罪の状況や当該金属の経済的価値などを踏まえ、当該金属を使用して製造された物品の窃取を防止する必要性が高い金属」として、政令で定められるものを指します(金属盗対策法第2条)。

ただし、記事執筆時点(2025年12月5日)ではその政令はまだ公布されておらず、現状は「銅」のみが特定金属の対象としかわかっていません。

恐らく、今後、アルミなど他の金属が追加される可能性もあるため、自身の取り扱い品目が将来的に規制対象となるかどうか、最新の情報を確認するようにしましょう

他の許可と特定金属くず買受業との違い

金属スクラップを扱う事業者にとって、どの許可が必要なのか判断に迷うことはよくあります。

特定金属くず買受業、古物営業許可、産業廃棄物処理業の許可、さらには自治体ごとの金属くず条例など、関連する制度はいくつかありますが、それぞれ目的や対象が異なります。

許可を取らずに営業すると、法令違反となる可能性があるため注意が必要です。

ここでは、特定金属くず買受業許可とその他の関連許可の違いを整理し、どのようなケースでどの許可が必要になるのかをわかりやすく解説します。

金属くず商許可と特定金属くず買受業の違い

特定金属くず買受業金属くず商
根拠法令金属盗対策法各都道府県の金属くず条例
規制の範囲全国都道府県ごと
主な目的金属類の盗犯を防止金属類の盗犯を防止
対象品目特定の金属のみ金属くず全般
対象行為買受売買・交換
有効期限なしなし
違反時の罰則・一年以下の拘禁刑
・100万円以下の罰金
都道府県による
備考用具の携帯も規制の対象規制がない都道府県もある

2つの制度の最大の違いは、「全国で統一された制度かどうか」と「規制の厳しさ」にあります。

従来の「金属くず商」は、各都道府県が独自に定めた条例に基づく制度で、条例の有無や内容は地域ごとに異なっていました。

そのため、条例が存在しない地域では規制自体がなく、取り締まりに地域差や抜け穴が生じていたのが現実です。

一方、「特定金属くず買受業」は、国の法律に基づく制度であるため、全国一律のルールが適用されます。

これにより、地域によって規制の有無が異なるといった不公平がなくなり、全国どこでも同じルールで取り締まりができるようになりました。

たとえば以前は、「A県では銅の買い取りに許可が必要だが、隣のB県では不要」といった差があり、盗難品が規制の緩い地域に持ち込まれるケースも実際に発生していました。

しかし、今後は日本全国どこであっても、銅などの特定金属を買い取る場合は必ず届出が必要となり、本人確認も義務づけられます。

違反した場合の罰則も全国で統一され、これまで以上に厳しく取り締まられるようになります。

なお、金属くず商に関する条例がすべて廃止されるわけではなく、地域によっては国の制度と併存する形で運用される可能性もあるため、引き続き地元の条例も確認しておくことが必要です

古物商と特定金属くず買受業の違い

特定金属くず買受業古物商
根拠法令金属盗対策法古物営業法
規制の範囲全国全国
主な目的金属類の盗犯を防止盗品等の売買を防止
対象品目特定の金属のみ13品目に分類される中古品
対象行為買受売買・交換
有効期限なしなし
違反時の罰則・1年以下の拘禁刑
・100万円以下の罰金
・3年以下の拘禁刑
・100万円以下の罰金
備考用具の携帯も規制の対象素材として取引される金属製品は対象外

古物商と特定金属くず買受業の最大の違いは「製品として売買するか、素材として売買するか」です。

古物商は「中古品」の売買を規制する制度です。

一方、特定金属くず買受業は「金属の原料(素材)」の買取を規制する制度で、中古品は対象外です。

そのため、同じ金属製品でも、どう扱うかによって必要な許可が異なります。

たとえば銅製の鍋を買い取る場合、鍋として再販売するなら「中古品取引」なので古物商許可が必要です。

一方、解体して銅の原料として売却するなら特定金属くず買受業の届出が必要になります。

産業廃棄物許可と特定金属くず買受業の違い

特定金属くず買受業産廃業
根拠法令金属盗対策法廃棄物処理法
規制の範囲全国全国
主な目的金属類の盗犯を防止廃棄物の排出抑制と適切な処理
対象品目特定の金属のみごみ
対象行為買受運搬・処理
有効期限なし5年
違反時の罰則・1年以下の拘禁刑
・100万円以下の罰金
・5年以下の拘禁刑
・1000万円以下の罰金
備考用具の携帯も規制の対象処理費用を徴収して再生利用が難しい金属くずを処分する場合はごみとして扱われる

産業廃棄物処理業許可と特定金属くず買受業の最大の違いは「お金を払って買い取るか、お金をもらって処分するか」です。

特定金属くず買受業は「価値のある金属を買い取る事業」です。

一方、産業廃棄物処理業許可は「再利用が難しいごみとして処分する事業」なので、対象となる行為がまったく異なります。

特定金属くず買受業では、買い取った金属は、原料として再生利用されることが前提です。

一方、産業廃棄物処理業では、排出者から処理費用を受け取り、再生利用が困難な金属くずをごみとして運搬・処分します。

たとえば、工場から出た銅線を「まだ価値がある原料」として買い取るなら特定金属くず買受業の届出が必要です。

一方、同じ銅線でも「汚染されていて再利用できないごみ」として処理費用をもらって処分するなら、産業廃棄物処理業の許可が必要になります。

特定金属くず買受業者に課される3つの義務

特定金属を取り扱う事業者には、盗難品の流通を阻止するため、主に以下の3つの義務が課されます。

買受業者の義務

  • 相手が誰か確認する(本人確認義務)
  • 取引内容を記録する(帳簿記録義務)
  • 怪しい場合は警察に通報する(不正品申告義務)

これらを遵守しない場合、金属くずの買受ができなくなったり、罰則の対象となるので注意が必要です。

本人確認

特定金属を買受ける際に、必ず免許証や在留カードなどで相手方の本人確認を行わなければなりません(金属盗対策法第7条)。

本人確認の内容

  • 氏名または法人の名称
  • 住所又は本店の所在地
  • 生年月日
  • その他の国家公安委員会規則で定める事項

ただし、過去に取引実績がある相手から代金を銀行振込で買い取る場合など、例外的に本人確認を省略できるケースもあります。

一方で、古物商許可の本人確認のように1万円以下の取引では本人確認は不要といった例外は設けられない可能性が高いです。

理由としては、警視庁と有識者による金属盗対策に関する討論会において以下のように報告されているからです。

1万円未満の金属くずの買受りについて本人確認義務等を免除することは、抜け穴となるおそれがあるため適当ではない。

出典:警視庁-金属盗対策法に関する討論会報告書

帳簿記録

特定金属くず買受業者は、金属くずを買い取った場合には、直ちに取引記録を作成しなければなりません(金属盗対策法第9条)。

記録すべき内容は以下です。

記録すべき内容

  • 相手の氏名
  • 買受けた日
  • 取引の内容
  • その他の国家公安委員会規則で定める事項

そして、作成した取引記録は、取引が行われた日から3年間保存する義務があります。

不正品申告

持ち込まれた金属について「盗品ではないか?」という疑いがある場合は、直ちに警察官へ通報する義務があります(金属盗対策法第10条)。

例えば、明らかに新品同様のケーブルが不自然に細断されて持ち込まれた場合や、「〇〇市」という所有者の刻印が入ったマンホールの蓋が持ち込まれた場合は、即座に警察へ連絡しなければなりません。

これを怠ると、事業者自身が責任を問われる可能性があります。

金属盗対策法に違反した場合の罰則

金属盗対策法に違反した場合、単なる営業停止命令にとどまらず、拘禁刑や罰金などの重いペナルティが科されます。

具体的には以下のような罰則があるため、特定金属くず買受業を行う場合は注意してください。

違反時の罰則

  • 営業停止命令違反・・・1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金
  • 指定金属切断工具の隠匿携帯・・・1年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金
  • 無届営業・・・6カ月以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金
  • 名義貸し・・・6カ月以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金
  • 虚偽の届出・・・30万円以下の罰金

特定金属くず買受業の届出制度はいつから?

金属盗対策法は2025年(令和6年)6月に公布されており、窃盗の犯行に使う用具の携帯の禁止等、一部規制について令和7年9月1日から始まっています。

ただし、特定金属くず買受業を行う際に必要となる届出の制度自体は記事執筆時点(2025年12月5日)でまだ始まっていません。

届出制度の開始の目安時期に関しては、2027年6月1日までに実施される見込みです。

そのため、現状は、特定金属くず買受業の届出制度に関する最新の情報を確認しつつ、各都道府県の金属くず条例に従って金属くず取引を行えば問題ありません。

特定金属くず買受業に関するよくある質問

金属盗対策法について、すでに古物商許可や金属くず商許可を持っている場合の対応など、いろいろな疑問を持っている方も多いと思います。

以下では金属盗対策法や特定金属くず買受業に関するよくある質問について回答します。

自宅のリフォームで出た銅線を売るのにも許可が必要ですか?

売る側(一般個人)に許可は不要です。ただし、買い取る業者側には厳格な本人確認が義務付けられているため、身分証の提示を求められます。

古物商許可を持っていれば、新たな手続きは不要ですか?

いいえ、届出が必要です。そもそも、金属くずは古物(中古品)に該当しないため、古物商許可を持っていても金属くずの売買はできません。

金属くず商許可を持っていれば特定金属くず買受業の届出は不要ですか?

いいえ、届出が必要です。金属くず商と特定金属くず買受業は同じ金属類を取引しますが根拠となる法律が異なるので、それぞれで申請や届け出が必要です。

まとめ

この記事のまとめ

  • 特定の金属を買い取る場合は特定金属くず買受業の届出が必要
  • 金属くず商は条例・特定金属くず買受業は法律で規制されている
  • 金属盗対策法では指定金属切断工具の隠匿携帯も罰則の対象
  • 特定金属くず買受業の届出は2027年6月1日までに実施される見込み

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