
法人や店舗仕入れの場合は?
1万円以下の場合は本人確認不要?

古物商が中古品を買い取る際に原則的には必要な本人確認。
ただし、例外として本人確認が不要なケースをもあります。
また、法人から仕入れる場合や店舗から仕入れる場合、どのように本人確認をすればいいのか気になる方も多いと思います。
そこで、この記事では古物商の専門家が買取時の本人確認方法や、法人や店舗仕入れ、1万円以下での本人確認の必要性について解説します。
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古物商の本人確認とは?

古物商の本人確認とは、中古品の買い取る際に、取引する相手が間違いなく本人であるかどうか確かめるための手続きです。
中古品は盗んだ物が売られてしまう可能性があり、中古品の売買市場への盗品の流入を防ぐために法律で本人確認が義務付けられています。
例えば、金券ショップでチケットなどを買い取ってもらう際に、必ず免許証などの提示を求められますが、これは古物商の本人確認を行っているわけです。
本人確認を怠った場合には6ヶ月以下の懲役や30万円以下の罰金
中古品の買取の際は面倒かもしれませんが、必ず本人確認をするようにしてください。
なぜなら、古物商が本人確認を怠った場合には、古物商に対して厳しい罰則等が設けられているからです。
例えば、本人確認を怠って盗品を買い取ってしまった場合、その盗品を元の持ち主に返すだけでなく、場合によっては弁償が必要になることもあります。
それだけではなく、法律違反として最大6ヶ月の営業停止や、古物商としての許可が取り消される可能性もあります。
また、6ヶ月以下の懲役や30万円以下の罰金、もしくはその両方が科される場合もあります。
そのため、中古品を買い取る際は必ず本人確認をするようにしてください。
因みに、例えば、以下のような場合に本人確認の義務違反として、罰則を受ける可能性があるので注意して下さい。
罰則の例
- 免許証等のコピーや住民票の写しを送ってもらうだけ
- 法人相手の取り引きの場合、法人の取引担当者の住所、氏名、年齢、職業を確認していない
- オークションサイトやフリマサイト等において1万円以上の中古品を仕入れて本人確認を行っていない。
中古品の買取時に本人確認が必要なケースとは?

古物商が中古品を買い取る場合、本人確認が必要な場合と不要な場合があります。
具体的には、以下のケースで本人確認が必要か不要かの判断が分かれます。
- 1万円以上の中古品を買い取った場合
- 1万円以下の特定の中古品を買い取った場合
一万円以上の場合は本人確認が必要
買取価格が1万円以上の場合 | 本人確認の要否 |
---|---|
バイク及び原付(本体) | 本人確認が必要 |
バイク及び原付(部品) | 本人確認が必要 |
ゲームソフト・CD・DVD | 本人確認が必要 |
書籍 | 本人確認が必要 |
その他の古物 | 本人確認が必要 |
中古品の買取価格が1万円以上の場合、取引相手の本人確認が必要となります。
1万円以下の場合は特定の品目のみ本人確認が必要
買取価格が1万円以上の場合 | 本人確認 |
---|---|
バイク及び原付(本体) | 本人確認が必要 |
バイク及び原付(部品) | 本人確認が必要 |
ゲームソフト・CD・DVD | 本人確認が必要 |
書籍 | 本人確認が必要 |
その他の古物 | 本人確認が不要 |
中古品の買取価格が1万円以下の場合、バイクやバイク部品、ゲームソフト・CD・DVD、書籍については本人確認が必要となります。
なぜなら、これらの商品はお金に換えるために万引きや盗難の被害に遭いやすいからです。
一方、それ以外の中古品については買取価格が1万円以下の場合には本人確認が不要となります。
中古品を買い取る際の本人確認の方法

中古品を買い取るとき、どのように本人確認をすればよいのでしょうか?
実は、本人確認の方法は取引の種類によって異なります。
具体的には、次の3つでことなります。
- 対面での取引の場合
- 非対面での取引の場合
対面での取引の場合
対面で中古品を買い取る場合には、以下の3つのいずれかの方法で本人確認を行います。
対面での本人確認方法
- 身分証明書を提示してもらう
- 第三者に本人確認を求める
- 目の前で書面に住所、氏名、職業、年齢を記入してもらう
①身分証明書を提示してもらう
身分証明書の提示を受けて、本人確認を行います。
身分証明書については、運転免許証や健康保険証、マイナンバーカードなどで身分確認を行うことができます。これらの書類には「職業」が記載されていない場合があります。
ただし、注意点としては健康保険証の記号や番号、マイナンバーカードの個人番号を記録したりコピーを取ることは法律で禁止されているため、提示された書類から必要な情報(住所、氏名、年齢など)だけを確認するようにしてください。
②第三者に本人確認を求める
本人以外の親兄弟や配偶者、勤務先などに電話で問い合わせて本人確認することも可能です。
ただし、この方法は相手方と電話口の方の関係が本当かどうかを確かしく、親族等になりすましている可能性も否定できません。
そのため、たとえば取引相手が第三者で本人確認をしたいと言ったとしても、なりすまし等が疑われる場合には、別の方法で本人確認を行うことも問題ありません。
③目の前で書面に住所、氏名、職業、年齢を記入してもらう
買取相手に住所、氏名、職業、年齢を目の前で記載してもらうことでも本人確認は可能です。
一方で、事前に署名された文書を受け取っただけでは、本人確認とは見なされません。
因みに、紙ではなくタブレットなどに、タッチペンで画面に氏名を記載してもらっても大丈夫です。
注意ポイント
上記とは別に、貴金属等の売買を行う古物商については、古物営業法に基づく本人確認とは別に、犯罪収益移転防止法の対象となるため、以下の本人確認が必要となります。
- 運転免許証、健康保険証等の提示(法人の場合には、登記事項証明書、印鑑登録証明書などの提示)などで取引相手の情報を確認する
- 200万円を超える取引である場合には、顧客等の資産及び収入の状況を源泉徴収票、預貯金通帳、貸借対象票、損益計算書等により確認する
非対面での取引の場合
非対面で中古品を買い取る場合には、以下のいずれかの方法で本人確認を行ることができます。
因みに、非対面での取引とはインターネットでの買取だけではなく、FAX、電話、メール、メッセージアプリなどにより、買取を受け付けた場合を指します。
非対面取引における確認の方法
- 相手方から電子署名を行ったメールの送信を受けること
- 印鑑証明書を送付してもらう
- 本人限定受取郵便を送る
- 本人限定受取郵便の現金書留を送る
- 住民票等を送付してもらう+転送不要簡易書留を送る
- 住民票等を送付してもらう+本人名義の口座に入金
- 免許証等の写真+簡易書留+本人名義の口座に入金
- IDとパスワードの送信を受ける
- 運転免許証等+健康保険証+転送不要簡易書留を送る
- アプリによる本人撮影画像+免許証等の写真
①相手方から電子署名を行ったメールの送信を受けること
相手の本人確認方法のひとつとして、電子署名を使ったメールを送ってもらう方法があります。
電子署名とは、契約書やデータが「本人が作ったもの」であり、「内容が書き換えられていない」ことを証明する仕組みです。
この制度では、安全性の基準をクリアした電子署名だけが正式に認められる仕組みになっています。
そのため、電子署名を行ったメールを受け取ることで本人確認として認められます。
②印鑑証明書を送付してもらう
取引相手に書類を郵送し、その書類に印鑑登録されている印鑑を押してもらいます。
そして、印鑑を押した書類と一緒に印鑑証明書を返送してもらいます。
書類の形式に特に決まりはありませんが、必要な情報(住所、氏名、職業、年齢)を記入できる欄を設けておくと良いです。
最後に、返送された書類に押されている印鑑と印鑑証明書に記載された印鑑が一致しているかを確認すれば、本人確認が完了します。
③本人限定受取郵便を送る
取引相手の住所、氏名、年齢、職業を確認した後、その住所宛に本人限定受取郵便を送ります。
この郵便は、受け取る際に本人確認が必要な仕組みになっており、配達員が相手の本人確認をしてから郵便物を渡します。
郵送するものに特別な決まりはなく、どんな内容でも構いません。
郵便物が無事に受け取られたことが確認できれば、本人確認が完了です。
④本人限定受取郵便の現金書留を送る
取引き相手の相手の「住所」「氏名」「職業」「年齢」を確認したうえで、商品代金を本人限定受取郵便の現金書留で送る方法です。
現金書留の受け取りの際に、配達員が本人確認をしてから渡します。
現金書留が無事に受け取られたことが確認できれば、本人確認が完了です。
⑤住民票等を送付してもらう+転送不要簡易書留を送る
取引相手に、以下のいずれか1つを送ってもらい、その住所宛に転送不要の簡易書留郵便を送ります。
メモ
住民票
戸籍謄本
戸籍抄本
印鑑登録証明書
例えば、相手に住民票の写しを送ってもらい、その住所宛に見積書を本人限定受取郵便で送り、その書類を品物と一緒に返送してもらうような場合です。
転送不要の簡易書留郵便は、記載された住所の本人だけが受け取れ、本人確認が可能です。
⑥住民票等を送付してもらう+本人名義の口座に入金
古物商が中古品の買取代金を支払う場合、相手方から「住民票の写し」「戸籍謄本・抄本」「印鑑登録証明書」など、市区町村の窓口で取得できる正式な証明書を送ってもらいます。
この証明書に記載された名前の預貯金口座や郵便振替口座に代金を振り込む契約を結びます。
また、相手方の「住所」「氏名」「職業」「年齢」の確認し、証明書の内容と一致していることを確認します。
たとえば、相手から住民票の写しと商品を送ってもらい、住民票に記載された名前と一致する口座に代金を振り込む形です。
因みに、法人と取引する場合には、取引担当者の住民票の写しなどと商品を送ってもらうだけでなく、法人の「登記事項証明書」や、取引担当者がその法人の取引を担当していることを証明する委任状なども一緒に提出してもらう必要があります。
そして、もちろん法人名義の口座に代金を振り込みます。
これらを行うことで、取引相手が本人または正当な法人であることを確認できます。
⑦免許証等の写真+簡易書留+本人名義の口座に入金
まず相手方から免許証のコピーや、鮮明な写真やスキャンデータを送ってもらいます。
その後、免許証に記載された住所宛に、簡易書留郵便で見積書等を送ります。
簡易書留郵便を受取った後、本人名義の口座に入金することで本人確認が出来ます。
⑧ IDとパスワードの送信を受ける
ホームページで取引を行う場合、初回の取引時に、本人確認を行った相手に「ID」と「パスワード」を発行します。
2回目以降の取引では、相手にそのIDとパスワードを入力して会員専用ページにアクセスしてもらうことで、本人確認を簡略化できます。
ただし、注意点としては、2回目以降の取引で、単にメールや申込書にIDやパスワードを書かせるだけというのは認められていない点です。
つまり、あくまでもホームページ上で本人がIDとパスワードを入力し、会員ページ等にアクセスする形でなければいけないというわけです。
⑨運転免許証等+健康保険証+転送不要簡易書留を送る
まず、相手方から本人確認書類として、運転免許証や国民健康保険被保険者証などの異なる身分証明書のコピー2点、または、身分証明書のコピー1点と公共料金の領収書などのコピー1点を送ってもらいます。
次に、古物商は本人確認書類に記載された住所宛に、簡易書留などの転送されない方法で書類を送付します。
最後に、送付した簡易書留が相手方に確実に届いたことで本人確認が完了となります。
因みに、相手方から受け取る領収書や納税証明書、社会保険料の領収書などの書類については、発行日または領収日が記載されており、相手方が送付する日から6ヶ月以内に発行されたものでなければなりません。
⑩アプリによる本人撮影画像+免許証等の写真
まず、自社アプリ等により、相手方から容貌を撮影した画像を送信してもらいます。
この際、送信される画像は加工されていないものでなければならず、あらかじめ撮影した画像を送信することも認められません。
また、画像は静止画だけでなく、リアルタイムのビデオ通話による動画も含まれます。
次に、相手方から運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類(写真付きのもの)の画像を送信してもらいます。
運転免許証の場合、表面だけでなく裏面や厚みが確認できる画像を送信してもらう必要があります。
マイナンバーカードの場合は、表面および厚みがわかる画像を送信してもらいますが、裏面には個人番号が記載されているため、裏面の送信は受けないよう注意が必要です。
因みに、この本人確認を行う場合でも、相手方から住所、氏名、職業、年齢を入力してもらう必要があります。
特に最近では、銀行口座の開設等でもこの本人確認方法が用いられています。
店舗仕入や法人から仕入れる場合の本人確認は必要

リサイクルショップや古着屋、古本屋などのお店から仕入れる場合、ここまでで解説してきた本人確認は必要なのでしょうか?
また、会社などの法人から仕入れる場合にも本人確認は必要なのでしょうか?
先に、結論からいうと、店舗や法人から仕入れる場合の本人確認は必要です。
つまり、上記で紹介した対面取引による仕入れに該当するため、以下の方法で本人確認を行わなければなりません。
対面での本人確認方法
- 身分証明書を提示してもらう
- 第三者に本人確認を求める
- 目の前で書面に住所、氏名、職業、年齢を記入してもらう
では、一体、お誰に対して本人確認を行えばいいのでしょうか?
例えば、法人の場合であれば、法人の取引担当者の住所、氏名、年齢、職業を確認しなければなりません。
これと同様に、店舗であればレジを担当しているスタッフに対して住所、氏名、年齢、職業の本人確認を行う必要があります。
ただし、確かに法律上は本人確認を行わなければならないのですが、正直なところ、法人の担当やレジスタッフに本人確認を行うのはあまり現実的ではありません。
店舗仕入での本人確認への対策
そこで、お店や店舗での本人確認対策として、以下の2点を紹介します。
- 本人確認が不要な1万円以下の商品を仕入れる
- 管轄の警察署に確認してみる
まず、1つめの対策は、お店や店舗から仕入れる場合には、本人確認が不要な1万円以下の商品に絞って仕入れることです。
冒頭でも解説しましたが、仕入れる商品によっては本人確認が不要な中古品もあります。
それを上手く利用して店舗を仕入れることで、店舗で仕入れた商品でも本人確認が不要になるというわけです。
そして、2つ目の対策は「警察署に確認してみる」という点です。
例えば、「お店で商品を仕入れようと思っているのですが、どのように本人確認すればいいですか?」と確認してみてください。
そうすると、警察署によっては店舗名や責任者の情報、購入時のレシートを保管しておけば大丈夫といわれるケースもあります。
ただ、この点に関してはあくまでもその警察署の本人確認の解釈であり、別の管轄では通常通り本人確認しか認められない可能性も十分にあります。
そのため、勝手に自分で「レシートやお店の情報を記録しておけば大丈夫」と判断せず、必ず管轄の警察署に確認してから判断するようにしてください。
まとめ
この記事のまとめ
- 原則として中古品を仕入れる場合には本人確認が必要
- 例外として1万円以下の中古品は本人確認が不要
- 商品の種類によっては1万円以下でも本人確認が必要
- 法人や店舗仕入でも本人確認が必要
- 本人確認を怠ると6月以下の懲役又は30万円以下の罰金
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所