

酒類販売業免許の登録免許税って何?
登録免許税はいくら払わないといけない?

酒類販売業免許を調べていると、必ず出てくるのが「登録免許税」という言葉です。
これは普段あまり耳にしない税金なのですが、酒類販売業免許を取得する際に必ず払わなければいけない税金です。
この記事では、登録免許税と何かや、どのような場合にいくら払わなければいけないのかなどをわかりやすく解説します。
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酒類販売業免許の登録免許税とは?

登録免許税とは、登記や許可、免許、登録といった行政手続きを受けるときに、国へ納める税金のことをいいます。
例えば、不動産の売買登記、自動車や航空機の登録、会社設立の登記、資格の登録、さらには特許や営業許可の取得など、いろいろな場面で課税されます。
そして、酒類販売業免許の場合は、「お酒を販売する免許」という特別な許可を国から受けることに対して課されます。
ただし、所得税や法人税のように利益に応じて毎年かかるものではなく、新しく免許を取るときに一度だけ支払う“手数料”のような税金です。
酒類販売免許の登録免許税の基本は3万円または9万円

酒類販売免許を取得するときに必要な登録免許税は、申請する免許の種類によって金額が決まっています。
具体的には以下の通りです。
例えば、お酒を店頭販売する「一般酒類小売業免許」を取得する場合に登録免許税3万円を納める必要があります。
一方、問屋業務などを行う「酒類卸売業免許」を取得する場合には登録免許税9万円を納めなければなりません。
「小売業免許」と「卸売業免許」の違いは?
酒類販売業免許はたくさんの種類があるのですが、大きく分けると「酒類小売業免許」と「酒類卸売業免許」の2つに分けられます。
その違いは以下の通りです。
酒類小売業免許 | 酒類卸売業免許 | |
---|---|---|
登録免許税 | 3万円 | 9万円 |
販売相手 | 一般消費者、Bar、飲食店など | スーパー、コンビニ、ドラッグストアなどの酒類販売業者 |
免許の種類 | ・一般酒類小売業免許 ・通信販売酒類小売業免許 | ・輸出酒類卸売業免許 ・輸入酒類卸売業免許 ・洋酒卸売業免許 ・自己商標卸売業免許 ・ビール卸売業免許 ・全酒類卸売業免許 |
酒類小売業免許は消費者に直接お酒を販売するための免許です。
例えば、私たちが普段利用する酒屋さんやスーパー、コンビニなどが取得している免許がこれにあたります。
一方で、酒類卸売業免許は酒類販売業免許を持っている酒類小売業者や酒類卸売業者に対してお酒を販売するための免許です。
そのため、お酒を誰に販売するかによって取得する免許が異なり、取得する免許が異なることで納める登録免許税が決まるというわけです。
酒類販売免許の種類に関する違いについてもっと詳しく知りたい方は酒類販売免許の種類や特徴をご確認ください。
また、どの免許を取得すれば良いのか分からないという方は「酒類許可ナビ代行」にご相談下さい。
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複数免許の同時申請でも1販売場につき最大9万円まで

同じ店舗で小売免許と卸売免許の両方を取りたい場合、「登録免許税は小売3万円と卸売9万円を合わせて12万円になるのでは?」と心配する方もいるでしょう。
しかし実際にはそうではなく、1つの販売場で複数の免許を同時に申請しても、登録免許税は最大で9万円までしかかかりません。
販売場とは、お酒を販売する場所のことで、たとえば、ある店舗で一般酒類小売業免許と輸出卸売業免許の両方を取得する場合でも、合計12万円ではなく、最大の9万円を納めればいいというわけです。
2店舗目など販売場が異なれば登録免許税は都度必要
複数免許を同時に申請しても最大9万円までというルールは「同じ販売場」での申請に限られます。
もし2店舗目を新たに出店する場合は、その場所ごとに酒類販売免許を取り直さなければなりません。
そして、新規の免許申請ごとに登録免許税を支払う必要があります。
例えば、東京の本店で酒類小売業免許を取得し、登録免許税3万円を納めている事業者が、大阪に2店舗目を出すとします。
この場合、大阪の店舗は本店とは別の販売場となるため、新たに小売業免許を申請し、改めて3万円の登録免許税を納めなければなりません。
つまり、同じ事業者であっても販売場の数だけ免許が必要で、そのたびに登録免許税も発生します。
詳しくは、酒類販売免許は店舗ごとに必要をご確認ください。
免許追加(条件緩和)の登録免許税は3パターン!

酒類販売免許は、新規で免許を取得した後からでも、条件緩和という免許を追加で取得する手続きがあります。
そして、取得する免許の組み合わせによって支払わなければいけない免許税も異なります。
具体的には以下の3つのパターンに分けられます。
小売免許から卸売免許への追加は差額の6万円を納付
酒類小売免許を取得した後に、事業拡大のため卸売免許を追加するケースがあります。
酒類小売免許を取るときに3万円の登録免許税をすでに納めているので、後から酒類卸売免許(9万円)を申請する場合には、その差額である6万円を支払えば足ります。
これは、1つの販売場にかかる登録免許税は最大で9万円までと決められているためです。
例えば、一般酒類小売業免許を持ち、国内の消費者向けに販売していた事業者が、新たに海外輸出を行うために「輸出酒類卸売業免許」を追加で申請する場合です。
このときの計算は以下の通りです。
- 90,000円(卸売免許の登録免許税) - 30,000円(既に納付した小売免許の登録免許税) = 60,000円
つまり、新規で9万円をまるごと支払う必要はなく、差額の6万円で済むというわけです。
同じ区分内の免許追加は登録免許税が不要
次に、同じ区分の中で免許を追加するケースです。
例えば、すでに「一般酒類小売業免許」を持っている店舗が、オンライン販売を始めるために「通信販売酒類小売業免許」を追加する場合がこれにあたります。
どちらも酒類小売業免許の区分(登録免許税3万円)に含まれるため、新たに登録免許税は発生しません。
- 30,000円(小売免許の登録免許税) - 30,000円(既に納付した小売免許の登録免許税) = 0円
- 90,000円(卸売免許の登録免許税) - 90,000円(既に納付した卸売免許の登録免許税) = 0円
これは同じ酒類卸売業免許の区分でも同様です。
たとえば「ビール卸売業免許」を持っている事業者が、新たに「洋酒卸売業免許」を追加する場合も、登録免許税は不要です。
卸売免許から小売免許への追加も登録免許税が不要
最後は、すでに酒類卸売免許を取得している事業者が、小売免許を追加するケースです。
酒類卸売免許の登録免許税は9万円ですが、その販売場に新しく酒類小売免許(3万円)の区分を追加しても、登録免許税を支払う必要はありません。
これは「1つの販売場にかかる登録免許税は最大9万円まで」というルールがあるためです。
- 90,000円(1つの販売場の最大の登録免許税) - 90,000円(既に納付した卸売免許の登録免許税) = 0円
具体的な例を挙げると、全酒類卸売業免許を持ち、酒類を酒屋に販売していた事業者が、直営店を設けて消費者に直接販売を始める場合です。
このとき「一般酒類小売業免許」を追加で申請しても、新たな登録免許税は不要です。
登録免許税以外に必要となる初期費用3選

酒類販売免許の取得では登録免許税が一番大きな負担になりますが、それ以外にも取得する上でいくつか費用がかかります。
具体的には以下の3つです。
上記はあくまでも、酒類販売免許の登録免許税以外に掛かる費用を記載しています。
もし、専門家に依頼する場合には、行政書士への報酬が必要となります。
酒類販売免許の取得費用に掛かる費用や行政書士の代行料金の平均相場をもっと詳しく知りたい場合には酒類販売業免許の費用をご確認ください。
公的書類の取得費用
酒類販売免許の申請には、いくつかの公的書類を取得して提出する必要があります。
代表的なものは、法人であれば「登記事項証明書」、店舗や事務所については所有している場合も賃貸している場合も「土地・建物の登記事項証明書」、そして「納税証明書」です。
これらの書類は法務局や県税事務所、市税事務所、市区町村役場などで取得でき、1通あたり数百円の手数料がかかります。
酒類販売管理研修の受講料
酒類販売免許を取得する際には、「酒類販売管理研修」を受講しなければならない場合があります。
特に酒類小売業免許では必須で、酒類販売管理者となる人が必ず受講する決まりになっています。
研修では、未成年者飲酒防止や適正な販売管理の方法など、法律を守ってお酒を販売するために必要な知識を学びます。
受講料は大体5,000円程度で、地域の酒販組合などが定期的に開催しています。
なお、酒類卸売業免許の場合は、過去に酒類販売の経験がある場合や取得する免許の種類にば受講を省略できることもあります。
定款の変更費用
法人として酒類販売免許を申請する場合、定款の事業目的に「酒類の販売」が記載されていなければ、免許の申請前に追加しなければなりません。
定款変更には株主総会の決議が必要となり、法務局での登記申請時に登録免許税3万円がかかります。
また、自分で手続きを行うこともできますが、司法書士に依頼すると代行費用が別途必要です。
詳しくは、酒類販売業免許の定款をご確認ください。
登録免許税の納付は免許取得後!不許可なら支払いは不要

「申請のときに登録免許税を先に払うの?」と不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし、結論としては、登録免許税は申請時ではなく、審査が終わって免許が付与されるタイミングで支払います。
そのため、酒類販売免許が取得できる分からない段階で高額な税金を先に支払う必要がないので、安心して手続きを進めることができます。
登録免許税を納めるまでの流れは以下となります。
ちなみに、管轄の税務署によっては免許通知書の受取当日に納付書が渡され、税務署の近くの金融機関で支払うように案内されるケースもあります。
酒類販売免許に更新料は不要!ただし3年ごとの管理者研修費用はかかる

酒類販売免許を一度取得すれば、免許自体に有効期限はなく、運転免許のように更新手続きや更新料はかかりません。
つまり、基本的には取得後に大きな追加費用は発生しません。
ただし、酒類小売業免許を取得する場合には「酒類販売管理研修」の更新受講が必須です。
酒税法により、選任された酒類販売管理者は3年ごとに研修を受講しなければならないと定められているからです。
例えば免許取得後に初回研修を受講した場合、3年後には再び数千円の受講料が必要になります。
一方、酒類卸売業免許を取得するために酒類販売管理研修を受講していた場合には、その後に酒類小売業免許を取得するなどがない限りは、再度受講する必要はありません。
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所