
ビール卸売業免許の申請方法や目安の費用は?
ビール卸売業免許の取得は難しいの?
ビール卸売業免許は酒類販売免許の中でも特に取得が難しく、年間50キロリットル以上の取引先の確保や、免許の抽選といった高いハードルがあります。
そのため、事前に要件や手続きの流れを理解していないと、せっかく準備を進めてもそもそも申請ができなかったり、審査に通らない可能性もあります。
この記事では、ビール卸売業免許の取得要件や申請手続きの流れ、必要書類、費用の目安、そしてもし取得が難しい場合に検討できる代替手段についてわかりやすく解説します。
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ビール卸売業免許とは?

ビール卸売業免許とは、酒類メーカーや商社からビールを仕入れ、酒販店やスーパー、飲食店等の酒類販売業者に卸売りするための免許です。
酒税法において、酒類販売業免許は「小売」と「卸売」に分かれており、さらに卸売の中で取り扱う品目が「全酒類」「ビール」「洋酒」などに細分化されています。
ビールは流通量が非常に多く、供給が増えすぎたり不足したりすると市場が混乱しやすいため、需要と供給のバランスを保つ必要性が高い酒類とされています。
そのため、免許の取得には特に厳しい規制が設けられており、新規参入のハードルは非常に高いです。
ビール卸売業免許が扱える酒類
ビール卸売業免許で卸売りができるのは、原則として「ビール」のみです。
これは、免許の条件欄に「販売できるお酒の範囲」が明記されており、ビール卸売業免許には「ビールに限る」という制限が付けられているためです。
具体的には、アサヒやキリンといった大手メーカーのビールはもちろん、小規模な醸造所が作るクラフトビールも卸売り可能です。
ただし、クラフトビールの中には製法上「発泡酒」に分類されるものもあり、その場合は別の免許が必要になります。
一方で、ウイスキーや日本酒などビール以外のお酒は販売できません。他のお酒も扱いたい場合は、それぞれ別の免許を取得する必要があります。
ビール卸売業免許の取得難易度が高い2つの理由

ビール卸売業免許の取得が難しいのは、単に書類を揃えれば取得できる免許ではないからです。
冒頭でも少し触れましたが、ビールは流通量が非常に多く、市場のバランスを保つ必要性が高い酒類として厳しい制限が設けられています。
その結果、「発行できる枠の数が限られていること」と「一定以上の取引が求められること」という、2つの大きな制約があります。
理由1:免許可能件数(枠)が決まっている
ビール卸売業免許は、申請すれば自由に発行されるものではなく、税務署ごとに「その年に新しく出せる免許の数」があらかじめ決められています。
これは、免許を出しすぎるとビールが市場にあふれ、価格の下落や流通の混乱が起きるおそれがあるからです。
国税庁は毎年、新しく発行できる免許の数を公表していますが、多くの地域では「1件のみ」や「今年は募集なし」となっています。
そのため、申請したい事業者が複数いる場合は、内容を審査する前に抽選が行われ、当選した事業者だけが審査に進める仕組みです。
このように、最初の段階で「枠に入れるかどうか」が決まってしまう点がビール卸売業免許の取得が難しい1つ目の理由です。
理由2:年間50kl以上の取引が必要
免許を取得するには、「年間50kl(キロリットル)以上のビールを取引できる」という証明が必要です。
これは、ビール卸売業免許の審査基準として、年間50kl以上の取引量が見込まれることが条件になっているためです。
具体的には、申請時に取引先からの「年間で○○kl買う予定があります」という約束を書面で提出しなければなりません。
この書面は「取引承諾書」と呼ばれ、税務署に取引の見込みを証明するための書類です。
ちなみに、50klがどれくらいの量かというと、以下のようになります。
- 350ml缶:約14万本分
- ビールサーバー用の樽(15L):約3,300樽分
これだけの量を「買います」「売ります」と約束してくれる取引先を、免許を申請する前の段階で確保しておく必要があります。
そのため、新規参入者にとって、実績も信用もない状態でこれだけの約束を取り付けるのは非常に難しく、取得難易度が高い2つ目の要因となっています。
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ビール卸売業免許の取得に必要な4つの要件

酒類販売免許を取得するには「人的」「場所的」「経営基礎」「需給調整」の4つの要件をすべてクリアする必要があります(酒税法第10条)。
どれか一つでも条件を満たしていなければ免許は取得できないので、必ず事前に確認す領にしてください。
人的要件
人的要件とは、申請者が法律を守り、適切に事業を行える人物であるかを確認するための基準です。法人の場合は、代表者だけでなく役員全員が対象になります。
ビールを含む酒類は、酒税という重要な税金が関わる商品です。
そのため、過去に税金のトラブルや法律違反がある人に免許を与えると、税金の未納や不正につながるおそれがあります。
こうしたリスクを防ぐため、人物面についても厳しく審査されます。
具体的には、以下に該当した場合には要件を満たしません。
法人の場合、役員のうち一人でもこれらに該当すると、会社全体として免許を取得することはできません。
場所的要件
場所的要件とは、ビールの卸売を行うための事業スペース(営業所や保管場所)が適切に確保されていることを求める基準です。
これは、他の事業者や生活空間と混同せず、適切にお酒を管理できる環境が必要とされるためです。
具体的には、製造工場や飲食店、他の酒販店と同じ場所では認められません。
また、以下のようなケースでも審査に引っかかるケースがあるので注意が必要です。
そのため、専用の事業スペースを確保し、物件選びの段階からオーナーの承諾を得ておくようにしましょう。
経営基礎要件
経営基礎要件とは、事業を継続できるだけの資金力と、酒類ビジネスの経験・知識があるかを審査する基準です。
これは、財務状況が不安定な企業にお酒の販売を任せると、税金の徴収が不安定になるおそれがあるためです。
具体的には、以下のような項目がチェックされます。
つまり、健全な財務状況だけでなく、年間50kl以上の取引見込みと10年以上の業界経験という非常に高いハードルをクリアしなければ、免許取得は難しいということです。
需給調整要件
お酒の販売免許を取るときは、「その地域でお酒を売るお店が増えすぎないか」という点が審査の対象となります。これが、いわゆる「枠(抽選)」に関わる部分です。
なぜこのようなルールがあるかというと、お店が増えすぎると価格競争が激しくなり、結果として酒税の確保に影響が出るおそれがあるからです。
また、すでに営業しているお店を守り、地域の市場を安定させる目的もあります。
具体的には、国税庁が毎年9月1日に各都道府県の税務署の掲示板等や、国税庁ホームページで免許可能件数が公表されます。
申し込みが枠の上限を超えた場合は抽選となり、抽選で決定した順番に従って審査が進みます。
申請から取得までの流れ

ビール卸売業免許の申請は、申請する時期によって手続きの流れが大きく変わります。
それぞれの申請時期の手続きの流れは以下となります。
7月1日から9月30日に申請の流れ
まず、管轄の税務署に相談しながら、必要な書類を準備します。
7月から9月の間に申請すると、9月1日に公表される免許枠にもとづいて、10月に公開抽選が行われます。
この抽選で「審査を受ける順番」が決まり、順番に審査が始まります。
審査にはおおよそ2か月ほどかかり、問題がなければ免許が取得できます。免許取得時には、登録免許税として9万円を納付する必要があります。
なお、公開抽選は「免許をもらえる人」を決めるものではなく、「誰から順番に審査をするか」を決める仕組みです。
たとえば、免許枠が2件の地域に5件の申請があった場合、抽選で審査順位が決まります。
1位と2位の人が先に審査を受け、2人とも合格すれば、その時点で免許枠は埋まり、その年度の免許付与は終了します。
一方で、1位または2位の人が審査に通らなかった場合は、次の順位の人が繰り上がって審査を受けることになります。
このように、免許枠が埋まるまで、抽選順位に沿って順番に審査が進んでいきます。
10月の抽選後から翌年6月30日まで
この期間に申請できるかどうかは、「免許の枠が空いているかどうか」で決まります。
そのため、最初に税務署へ相談する際に、現在その地域に免許枠の空きがあるかを必ず確認します。
枠に空きがあれば、そのまま書類の準備を進めて申請することができますが、すでに枠が埋まっている場合は、この期間中に申請することはできません。
その場合は、次の10月に行われる公開抽選に向けて、7月から9月の抽選対象申請期間にあらためて申請する必要があります。
なお、個人事業から法人への変更や、営業の譲渡といったケースについては、原則として抽選の対象外となり、通常の枠とは別の扱いになります。
また、すでにビール卸売業免許を持っている場合でも、他の都道府県へ販売場を移転する際は、需給調整要件の対象となります。
この場合、移転先の地域に免許枠の空きがなければ、公開抽選に申し込む必要があります。
ビール卸売業免許の申請に必要な書類

ビール卸売業免許で必要な書類は以下となります。
これらの書類にはそれぞれ記入時の注意点があるため、詳しくは酒類販売免許の必要書類の記事をご確認ください。
特に重要なのが「取引承諾書」です。
なぜなら、ビール卸売業免許では年間50キロリットル以上の取引実績が求められるからです。
そのため、取引承諾書には仕入れ先や販売先から「ビール年間で○○リットル以上取引します」という約束を明記してもらう必要があります。
1社で年間50キロリットルに達しなくても、複数社の合計で50キロリットル以上になれば問題ありません。
つまり、免許申請前にビール50キロリットルの仕入れ先と販売先を確保しておかなければなりません。
ビール卸売業免許の取得に掛かる期間は約4カ月

ビール卸売業免許の取得には、通常3~4カ月かかります。
これは、事前準備から審査完了までスムーズに進めることができた場合の目安期間です。
期間の内訳は以下のとおりです。
| 内容 | 期間 |
|---|---|
| 事前準備 | 0.5~1ヶ月 |
| 必要書類の収集~作成 | 0.5~1ヶ月 |
| 審査期間 | 2か月 |
| 合計 | 3~4カ月 |
最も時間がかかるのは、税務署による審査期間です。この審査期間は申請者側では短縮できません。
そのため、少しでも早く取得したい場合は、申請前の準備段階でいかにスムーズに進められるかが重要になります。
書類の不備があると、追加提出や修正が発生し、結果としてさらに時間がかかってしまうので注意してください。
また、すでに枠が埋まっている場合、翌年の抽選まで待つ必要があるため、申請から取得まで1年程度かかることもあります。
あらかじめ抽選のタイミングを確認しておくようにしましょう。
ビール卸売業免許の取得に掛かる費用は9.5万円前後

| 内訳 | 費用 |
|---|---|
| 登録免許税 | 90,000円 |
| 公的書類取得費用 | 5,000円前後 |
| 合計 | 95,000円前後 |
ビール卸売業免許の取得には、約9.5万円の費用が掛かります。
この費用の大部分は「登録免許税」という国に納める税金です。
ただし、すでに同じ販売場で別の酒類免許を取得している場合は、費用が安くなることがあります。
同一の販売場で支払う登録免許税には上限があり、最大9万円までと決まっているからです。
具体的には以下のようになります。
行政書士に依頼した場合の報酬は14万円前後
| 内訳 | 費用 |
|---|---|
| 登録免許税 | 90,000円 |
| 公的書類取得費用 | 5,000円前後 |
| 行政書士報酬 | 136,591円 |
| 合計 | 230,000円前後 |
ビール卸売業免許の申請を行政書士に依頼した場合、報酬は14万円前後が相場です。
令和2年度の日本行政書士会の報酬統計調査によると、酒類販売免許の申請代行の全国平均は136,591円となっています。
なお、ビール卸売業免許は行政書士に依頼して進めるケースが一般的です。
理由は、準備する書類が多く、取引先に依頼して用意してもらう書類もあるうえ、申請書の記入内容も細かく、要件との整合を取りながら作る必要があるためです。
自分で申請すれば費用は抑えられますが、書類作成や確認に時間がかかりやすく、追加の修正や差し替えが発生すると手間も増えます。
そのため、時間と手間をかけずに確実に免許を取得したいと言う方は、行政書士に依頼することをおすすめします。
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ビール卸売業免許の取得が難しい場合の5つの代替案

ビール卸売業免許は、取得難易度が高いので「取りたくても取れない」ケースが少なくありません。
ただ、ここで完全に諦める必要はありません。
販売先や販売するお酒の種類を少し変えるだけで、別の免許で酒類販売事業をスタートできる可能性があるからです。
ここでは、具体的な代替案を5つ紹介します。
代替案1:洋酒卸売業免許(発泡酒)
| 免許の種類 | ビール卸売業免許 | 洋酒卸売業免許 |
|---|---|---|
| 販売相手 | 国内外の卸売業者 | 国内外の卸売業者 |
| 販売できるお酒の種類 | ビール | クラフトビールを含む洋酒 |
| 販売方法 | 店頭・通信 | 店頭・通信 |
ビール卸売業免許の取得が難しい場合、発泡酒に分類されるクラフトビールを扱うことで洋酒卸売業免許での卸売が可能になります。
酒税法では、麦芽の使用割合などによって「ビール」と「発泡酒」が区別されており、一部のクラフトビールは発泡酒に該当します。
そして、発泡酒は、法律上「洋酒」として扱われるため、洋酒卸売業免許で取り扱うことができるというわけです。
さらに、洋酒卸売業免許を取得すれば、発泡酒に限らず、ワインやウイスキー、ブランデーなどの洋酒も取り扱えるようになります。
代替案2:輸出入酒類卸売業免許
| 免許の種類 | ビール卸売業免許 | 輸出入卸売業免許 |
|---|---|---|
| 販売相手 | 国内外の卸売業者 | 輸出:国外の酒類販売業者輸入:国内の酒類販売業者 |
| 販売できるお酒の種類 | ビール | 全酒類 |
| 販売方法 | 店頭・通信 | 店頭・通信 |
ビールを国内で卸売するのではなく、海外への輸出や海外からの輸入を行うビジネスであれば、「輸出酒類卸売業免許」「輸入酒類卸売業免許」で対応することができます。
ビール卸売業免許ではビールしか扱えませんが、輸出入酒類卸売業免許なら、焼酎や日本酒、ウイスキーなど、あらゆる種類のお酒を取り扱うことができます。
ただし、輸出入酒類卸売業免許では、国内で仕入れたお酒を国内の業者に販売することができない点は注意が必要です。
つまり、国内で仕入れたお酒を海外に卸すか、海外で仕入れたお酒を国内に卸すかしかできません。
代替案3:自己商標酒類卸売業免許(OEM)
| 免許の種類 | ビール卸売業免許 | 自己商標酒類卸売業免 |
|---|---|---|
| 販売相手 | 国内外の卸売業者 | 国内外の卸売業者 |
| 販売できるお酒の種類 | ビール | 自己商標の全てのお酒 |
| 販売方法 | 店頭・通信 | 店頭・通信 |
メーカーに製造を委託して作った自社ブランドのビールを卸売したい場合は、「自己商標酒類卸売業免許」で対応できます。
自己商標酒類卸売業免許は、自分で企画・開発したオリジナルブランドのお酒に限って、卸売ができる免許です。
たとえば、自分で商標やラベルのデザインを考え、製造はメーカーに依頼する「OEM製造」の形で作ったビールが対象になります。
自分のブランドでビールを作って卸売販売したいという方には、自己商標酒類卸売業免許の取得がおすすめです。
代替案4:店頭販売酒類卸売業免許
| 免許の種類 | ビール卸売業免許 | 店頭販売酒類卸売業免許 |
|---|---|---|
| 販売相手 | 国内外の卸売業者 | 国内の卸売業者 |
| 販売できるお酒の種類 | ビール | 全酒類 |
| 販売方法 | 店頭・通信 | 店頭(近隣への配達不可) |
店頭での対面販売に限定したビールの卸売であれば、「店頭販売酒類卸売業免許」で対応できます。
店頭販売酒類卸売業免許があれば、事前に登録された取引先(会員)に対して、店頭であればビールを含むすべてのお酒を卸売することが認められているからです。
「ビール卸売業免許」はビールしか扱えませんが、「店頭販売酒類卸売業免許」なら、焼酎や日本酒、ウイスキーなど幅広い種類のお酒を取り扱えるのが大きなメリットです。
ただし、この免許では不特定多数の相手に卸売りすることはできません。あくまで、事前に登録した業者(会員)に限られます。
さらに、インターネットでの販売や、電話・FAXで注文を受けて配達するなど、店舗外での販売はすべて禁止されています。
商品は必ず、登録された業者が店舗に直接来店し、その場で商品を受け取る必要があります。
代替案5:一般酒類小売業免許
| 免許の種類 | ビール卸売業免許 | 一般酒類小売業免許 |
|---|---|---|
| 販売相手 | 国内外の卸売業者 | 一般消費者(飲食店含む) |
| 販売できるお酒の種類 | ビール | 全酒類 |
| 販売方法 | 店頭・通信 | 店頭(近隣への配達可) |
ビールを酒類販売業者ではなく、飲食店に卸売したい場合は、「一般酒類小売業免許」で対応できます。
なぜなら、お酒の販売には「卸売」と「小売」の2種類があり、飲食店への販売は法律上「小売」に分類されるからです。
具体的には以下のように区別されます。
- 卸売: 酒屋などの酒類販売業者に販売すること
- 小売: 飲食店や一般消費者などの自分で使う人に販売すること
飲食店はお酒を仕入れて自分の店で提供するため、「自分で使う人」に該当し、飲食店への販売は小売として扱われます。
そのため、一般酒類小売業免許を取得すれば、ビールだけではなく日本酒や焼酎、ワイン、ウイスキーなども飲食店に卸売りすることが可能です。
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まとめ
この記事のまとめ
- ビール卸売業免許はビールを酒類販売業者に卸すための免許
- ビール卸売業免許は枠数が決まっているので抽選があり難易度が高い
- ビール卸売業免許は年間50キロリットル以上の取引が必要なので難易度が高い
- ビール卸売業免許が取れない場合は他の免許の取得を検討する
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所