
お酒を売る免許を取るのって難しい?
酒類販売免許を取れるなら取りたい!

これからお酒を販売したいと考えている場合、誰でもお酒の販売免許を簡単に取得できるものなのか気になりますよね。
この記事では酒類販売免許の専門家である行政書士が「免許の種類別の取得難易度」や「免許を取得する上での注意点」について解説します。
この記事を書いた人
酒類販売免許を取得するのは難しい

先に、結論から言うと酒類販売免許を取得するのは以下の5つの点から難しいと言えます。
- 酒類販売免許の法律が複雑
- 免許取得要件が意外に高い
- 3~9万円の登録免許税がかかる
- 物件の所有者から承諾が必要
- 作成する書類の数が多い
上記は、全ての酒類販売免許の取得に共通する点です。
以下、それぞれについて簡単に解説していきます。
酒類販売免許の法律が複雑
酒類販売免許を申請する場合、酒類販売についてしっかりとした基礎知識が必要です。
なぜなら、酒類販売免許はかなり複雑なつくりになっていて、取得する免許の種類によって、販売できる相手やお酒の種類が異なったり、そもそも免許を取得しても販売できないお酒もあるからです。
例えば、通信販売酒類小売業免許を取得してもネットで販売できないお酒があったり、一般酒類小売業免許を持っていても近くの酒屋にお酒を販売できなどがあります。
ですので、酒類販売免許を申請する場合には、酒類販売に関する基礎知識をしっかりと身に付ける必要があります。
免許取得要件が意外に高い
酒類販売免許には以下のような要件があり、その要件を全て満たす必要があります。
上記の中でいうと、犯罪歴や税金の未納・滞納の要件を満たすことは難しくはないかと思います。
一方で、酒類販売経験や経営経験、営業所の要件を満たすことが難しい人は結構多いです。
例えば、取得する免許の種類によっては酒類販売経験が10年以上必要だったり、貿易経験が必要だったり、酒造メーカーから直接証明書を取得したりしなければならない場合もあり、誰でも簡単に満たせる要件ではありません。
酒類販売免許の要件について詳しく知りたい場合には「酒類販売免許の要件とは?初心者向けに4つの条件をわかりやすく解説」の記事をご確認ください。
3~9万円の登録免許税がかかる
小売業免許 | 卸売業免許 | |
---|---|---|
登録免許税 | 30,000円 | 90,000円 |
公的書類取得費用 | 3,000円前後 | 3,000円前後 |
合計 | 33,000円前後 | 93,000円前後 |
上記は酒類販売免許を取得するのに掛かる費用です。
一般小売業免許や通信販売小売業免許のみを取得する場合には3万円前後なので、そこまでハードルは高くありません。
一方、洋酒卸売業免許や輸出入卸売業免許、全酒類卸売業免許を取得する場合には9万円前後の費用が必要となるので、少しハードルが上がります。
因みに、この登録免許税は上限が9万円となるので、例えば小売業免許と卸売業免許を一緒に取得した場合でも12万円(3万円+9万円)とはならず、上限の9万円を支払えば大丈夫です。
酒類販売免許の取得費用や行政書士の平均相場に関しては「酒類販売免許の取得費用は?|個人・法人別や行政書士の代行料金の平均相場」をご確認ください。
物件の所有者から承諾が必要く
酒類販売免許はどんな場所でも取得できるというわけではなく、以下の2つを満たす必要があります。
- 不動産の所有者から酒類販売の承諾を得ていること
- 飲食店と同じ場所ではないこと
酒類販売免許は行政から許可される免許なので、適正な使用権限がない不動産を営業所として取得できません。
適切な使用権限とは、不動産の所有者から直接使用を承諾されていることをいい、又貸し物件などは所有者の承諾がない限り認められません。
また、仮に事務所として使用を認められていたとして、小売業免許等の店頭販売を前提とした免許については、不動産の所有者に酒類販売の店舗として使用してい良いかの承諾を再度取る必要があります。
その他、マンションなどでは事業としての使用が認められていないことがほとんどなので、マンション等で取得する場合には管理組合等の承諾が必要となるため難しいです。
作成する書類に数が多い
酒類販売免許の書類の作成は、これまでに申請書等の作成をした経験がない場合にはかなり難しと感じるかと思います。
というもの、例えば酒類販売免許を法人で申請する場合、申請する免許の種別にもよりますが添付書類などを合わせると50~100枚近くの書類を税務署に提出する必要があるからです。
その中には、税務署のHPが準備してくれている書類もあれば、自分で1から作らないといけない書類や、役所などで取得しなければならない書類もあります。
そして、この申請書の作成は専門家が作成する場合でもかなり時間を要してしまうので、これまで申請書の作成をしたことがない方が作成する場合には相当難しいと感じるかと思います。
免許の種類別の取得難易度(難易度が低い順)と注意点

免許の種別 | 難易度(5点満点) |
---|---|
通信販売酒類小売業免許 | (3.5/5点) |
一般酒類小売業免許 | (3.5/5点) |
酒類輸出卸売業免許 酒類輸入卸売業免許 | (4/5点) |
洋酒卸売業免許 | (4/5点) |
自己商標卸売業免許 | (4.5/5点) |
ビール卸売業免許 | (5/5点) |
全種類卸売業免許 | (5/5点) |
上記では、酒類販売免許全般にいえる免許の取得難易度について解説しました。
ただ、酒類販売免許にはいろいろな種類の免許があって、その免許の種類によっても取得難易度が異なります。
以下では、それぞれの免許の取得難易度と注意点について難易度が低い順に解説していきます。
通信販売酒類小売業免許
通信販売酒類小売業免許 | 難易度(5点満点) |
---|---|
酒類販売の経験 | (3/5点) |
事業経営の経験 | (3.5/5点) |
仕入・販売先の確保 | (3.5/5点) |
書類の作成 | (4/5点) |
総合評価 | (3.5/5点) |
通信販売酒類小売業免許については、最も酒類販売免許の中でも取得難易度が低い免許です。
要件として酒類販売経験は求められものの、酒類販売管理者研修を受講することで、要件をクリアできるのでこれまでに酒類販売経験がない方でも取得が可能です。
また、ネット通販なので店舗ではなく事務所のような場所でも免許の取得が可能です。
ただし、通信販売業免許で販売できるお酒には制限がある為、国内のお酒を通販する場合には酒造メーカーから証明書を貰う必要があるので小売業免許よりは少しハードルが上がります。
一般酒類小売業免許
一般酒類小売業免許 | 難易度(5点満点) |
---|---|
酒類販売の経験 | (3/5点) |
事業経営の経験 | (3.5/5点) |
仕入・販売先の確保 | (3.5/5点) |
書類の作成 | (4/5点) |
総合評価 | (3.5/5点) |
一般酒類小売業免許は販売免許の中でも、比較的取りやすい免許です。
要件として酒類販売経験は求められものの、通信販売免許と同じく、酒類販売管理者研修を受講することで、要件をクリアと見なされるケースも多く、これまでに酒類販売経験がない方でも取得が可能です。
しかも、通信販売免許とは異なり、全種類のお酒を取扱う事が可能です。
ただし、店頭販売を前提として免許となるので店舗売りができる物件を探さなければならないという点では少しハードルが高いです。
酒類輸出入卸売業免許
酒類輸出入卸売業免許 | 難易度(5点満点) |
---|---|
酒類販売の経験 | (3.5/5点) |
貿易・事業経営の経験 | (4/5点) |
仕入・販売先の確保 | (4/5点) |
書類の作成 | (4/5点) |
総合評価 | (4/5点) |
酒類輸出卸売業免許・酒類輸入卸売業免許については、一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許と比較すると取得のハードルが少し高いです。
なぜなら、輸出入の経験と仕入先の確保が必要だからです。
まず、輸出入の経験については、何らかの商品についての輸出入経験が必要となります。
これまで輸出入の経験がない人が、いきなりお酒の輸出入を行う事はできないと判断されてしまうからです。
次に、仕入れ先・販売先の確保についてですが、申請の時点で国内や海外の取引き相手をある程度は決めておかなければなりません。
これらの点から、小売業免許を取得するよりも難易度が若干高いと言えます。
洋酒卸売業免許
洋酒卸売業免許 | 難易度(5点満点) |
---|---|
酒類販売の経験 | (4/5点) |
貿易・事業経営の経験 | (4/5点) |
仕入・販売先の確保 | (4/5点) |
書類の作成 | (4/5点) |
総合評価 | (4/5点) |
洋酒卸売業免許についても、一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許よりも難易度が少し上がります。
理由としては小売業免許は一般消費者を相手にして取引するのに対して、卸売業免許は酒屋を相手に取引するからです。
そのため、これまでの酒類販売経験や事業の経営経験が求められます。
また、申請の際には取引先をある程度決めておく必要があり、免許を持っていない状態で取引先を探すのは少しハードルが高いと言えます。
自己商標卸売業免許
自己商標卸売業免許 | 難易度(5点満点) |
---|---|
酒類販売の経験 | (4/5点) |
貿易・事業経営の経験 | (4/5点) |
仕入・販売先の確保 | (5/5点) |
書類の作成 | (5/5点) |
総合評価 | (4.5/5点) |
自己商標卸売業免許は、輸出入卸売業免許や洋酒卸売業免許以上に取得の難易度が高いです。
なぜなら、自社ブランドのお酒を製造する酒造メーカーを決定して、打合せを重ねて商品の具体的な案が出てきてタイミングでようやく免許の申請ができるようになるからです。
また、申請の際にはお酒に張るラベル案を提出することになるのですが、お酒に張るラベルについても法律に基づいた表記をしなければならないため、専門的な知識が必要となります。
つまり、酒類販売免許を持っていない状態から、酒造メーカーと打ち合わせを重ねなければならず、免許を持っていないクライアントは相手にされないこともあるため、自己商標卸売業免許の取得は難しいといえます。
ビール卸売業免許
ビール卸売業免許 | 難易度(5点満点) |
---|---|
酒類販売の経験 | (5/5点) |
貿易・事業経営の経験 | (5/5点) |
仕入・販売先の確保 | (5/5点) |
書類の作成 | (5/5点) |
総合評価 | (5/5点) |
ビール卸売業免許については、酒類販売経験が10年以上必要となるので、それだけでも取得難易度はかなり高いです。
しかも、10年以上の経験があれば誰でも申請ができるというわけではなく、許可件数には枠が設けられており、その枠内でしか許可をとることができません。
更に、年間で5万リットルの取引きが必要となっていることも難易度が高い要因の一つです。
全酒類卸売業免許
ビール卸売業免許 | 難易度(5点満点) |
---|---|
酒類販売の経験 | (5/5点) |
貿易・事業経営の経験 | (5/5点) |
仕入・販売先の確保 | (5/5点) |
書類の作成 | (5/5点) |
総合評価 | (5/5点) |
全酒卸売業免許についても、酒類販売経験が10年以上必要となるので、それだけでも取得難易度はかなり高いです。
また、全酒類卸売業免許についても、ビール卸売業免許と同様に許可件数に枠が設けられており、その枠内でしか許可を取得することができません。
しかも、全酒類卸売業免許は人気が高い免許なので、希望者が多い場合には、抽選が行われます。
更に、年間の取引予定数量も10万リットル以上が必要となるため、免許を取得する難易度は相当高いです。
酒類販売免許の取得までの手順

免許の種類別の取得難易度がわかったら、次は酒類販売免許の取得ができるまでの手順が気になると思います。
では、どのように申請を進めればいいかというと、酒類販売免許を取得する際の流れは以下のような流れとなります。
- 取得する酒類販売免許の要件を確認する
- 免許を取得する営業所を決める
- 営業所を管轄する税務署に相談に行く
- 酒類販売管理者研修を受講する
- 酒類販売免許の必要書類を収集する
- 酒類販売免許の申請書を作成する
- 申請書を税務署に提出する
- 登録免許税を納める
- 酒類販売免許の許可証を受取る
酒類販売免許はここまででも解説した通り、取得する免許によって要件が異なるので、まずは取得する免許の要件を確認します。
そして、要件を確認して取得できそうであれば、営業所の管轄の税務署に相談にいきます。
もちろん、税務署に必ず相談に行かなくても良いのですが、事前に相談して確認しておかないと、そもそも免許の取得ができないケースや、添付書類の不備や、記載ミスが多すぎて取得までにかなりの時間が掛かってしまいます。
ですので、自分で申請する際には必ず管轄の税務署に相談に行くことをおすすめします。
そして、税務署で申請に必要な書類や申請書の書き方を確認し、その書き方に従って申請書の提出まで進めていくのが一番スムーズに免許の取得が可能です。
酒類販売免許は個人でも取得できる?

多くの場合、酒類販売免許を法人で申請するのが一般的ですが、もちろん個人で申請しても免許の取得は可能です。
しかも、法人と個人で免許の取りやすさに違いはありません。
ただ、個人と法人では多少取り扱いが違う部分があります。
例えば、法人であれば過去三年間の決算書を提出し、3期連続で赤字ではないかや、債務超過に陥ってないかなどの要件を満たさなければいけないので、経営状況によっては免許の取得が難しい場合があります。
一方、個人であれば過去三年の確定申告書のコピーを提出しなければならないものの、法人ほど厳密に経営状況を判断されるわけではなく、事業資金がある程度確保されていれば取得が可能だったりします。
その他にも、法人の場合には酒類に関する事業目的の追加やなども必要となるので、個人で申請する方が少しだけ必要な手続きが少ないと言えます。
酒類販売免許の申請は自分でもできる?

この記事を読んでいる方の中には酒類販売免許を自分で申請しようと考えている方のおられるかと思います。
結論を先に言うと、自分でも酒類販売免許の取得はできなくはないですが、かなり難しい上に注意が必要です。
なぜなら、お酒の免許はかなり複雑な上、数十枚にわたる書類を作成しなければならないからです。
お酒の免許を取得すれば、誰から買っても、誰に売っても、どんなお酒を取扱っても良いわけではありません。
取得した免許に合った取引相手から、取得した免許に合ったお酒を仕入、取得した免許に合った相手に販売しなければなりません。
もし、間違った認識で免許を取得してしまい、本来取得した免許では販売してはいけない相手やお酒を販売した場合には酒税法違反となってしまいます。
そして、酒税法違反を犯した場合には10年以下の懲役または100万円以下の罰金、または1年以下の懲役または50万円以下の罰金となる可能性があります。
また、申請の際には税務署職員と酒類販売免許に関する細かな内容の確認などがあるので、酒類販売に関する基礎知識は必要不可欠です。
更に、自分で申請書を作成する場合、国税局のHPの手引きを確認しながら進めることになりますが、60ページ近くある手引きを全て確認しなければなりません。
しかも、手引きには専門的な言葉が多く、全て読むだけでも一苦労。
その上、その手引きを確認しながら数十枚の書類を作成しなければならないため、自分で申請をするのはかなり大変ではあります。
ですので、自分で酒類販売免許を申請する場合には、管轄の税務署としっかりと打ち合わせを重ねた上で申請することをおすすめします。
未経験者だと酒類販売免許の取得は難しい?

酒類販売の未経験者が免許を取得するのは難しいですが、決して不可能というわけではありません。
なぜなら、実際にNAGASHIMA行政書士事務所でも、これまでにたくさんの酒類販売未経験の方からご依頼を頂き、無事に酒類販売免許を取得きてきたからです。
とはいえ、酒類販売免許を取得する要件として、どの免許に関しても必ず酒類販売経験の要件をもうけられているため、未経験者が誰でも簡単に免許を取得できるというわけではありません。
例えば、酒類販売管理者研修の受講や、これまでの職務経歴による別の経験のアピール、添付書類や補足書類の作成、税務署担当者との綿密な打ち合わせ等により免許が取得できます。
ですので、もし、自分で申請するのが難しいと感じた場合には酒類販売免許を専門に取り扱っている行政書士に相談・依頼を検討するのも良いかと思います。
行政書士に依頼した場合、それぞれの事務所によってサービス内容は異なりますが、比較的簡単に酒類販売免許の取得が可能になるからです。
因みに、NAGASHIMA行政書士事務所では酒類販売免許の申請を全国対応で行っておりますので、酒類販売免許の取得を検討されている場合には是非、ご依頼・ご相談下さい。
まとめ
この記事のまとめ
- 酒類販売免許の取得は難しい
- 酒類販売免許は免許の種類によって難易度が異なる
- 酒類販売免許は自分でも申請できるけどかなり難しい
- 無許可営業で後から申請しても逮捕や罰則は受けない
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所