
酒類販売免許を取得するには酒類販売場(事務所・営業所)を設ける必要があります。
ただし、どんな場所でも販売場にできるのかや、ネットで販売する場合には販売場がなくても取れるのか気になる方も多いと思います。
この記事では、酒類販売免許の販売場の要件や、申請時に必要となる販売場の不動産登記簿・使用承諾書の取り方について解説します。
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酒類販売免許の「酒類販売場」とは?

酒類販売場とは、文字通り主としてお酒を販売する場所のことです。
例えば、店頭でお酒を販売する場合には、お酒を販売する店舗が酒類販売場であり、ネットでお酒を販売する場合には事務所が酒類販売場となります。
そして、酒類販売免許は「販売場」に与えられる許可なので、免許を取得した販売場以外でお酒を販売することは基本できません。
ただし、法人住所で酒類卸売業免許などを取得した場合に、社外で営業活動を行うことはもちろん可能です。
酒類販売免許は販売場なしでも取れる?
例えば、ネットでお酒を販売するケースで、自社に在庫を置かずにメーカーや仕入れ先から購入者に直接送るようなビジネスモデルも多いです。
このような場合にも、販売場は必要なのでしょうか?
結論から言うと、在庫を持たずにメーカーや仕入れ業者などから直送するような場合でも販売場は必要です。
この場合、基本的には事務所や営業所を販売場として申請する必要があります。
酒類販売免許の販売場の要件

酒類販売免許を取得する販売場の場所には一定の基準があります。
そして、酒税法第10条9号では、お酒の販売管理が適切に行えない場所と判断された場合、免許が交付されない可能性があると定められています。
具体的には、以下のような場所で酒類販売免許を申請する場合には、酒類販売免許を取得できない可能性があるので注意が必要です。(法令解釈通達第2編第10条関係)
- 酒場や飲食店と同じ場所
- 他の酒類販売業者と同じ場所
- 適切な使用権限がない場所
酒場や飲食店と同じ場所
酒類販売免許を申請する販売場が、居酒屋や飲食店などに隣接した場所では基本的には酒類販売場としてして認められません。
なぜなら、飲食用のお酒と販売用のお酒が混ざってしまい、お酒を適切に管理できない可能性があるからです。
ただし、飲食店内でも場所が完全に区画割されており、お酒の在庫や決済についても飲食店とは分けられているような場合には酒類販売免許の取得が例外的に認められるケースもあります。
もちろん、お店の構造などによっては取得が難しいケースもありますが、場所が飲食店だからと言う理由だけで諦める必要はありません。
また、弊所ではこれまでに飲食店で酒類販売免許を多数取得しておりますので、もし、飲食店に酒類販売免許の取得を検討されている場合には、お気軽に弊所へご相談ください。
他の酒類販売業者と同じ場所
他の酒類販売業者が酒類販売免許を取得している場所と同じ場所を販売場として免許を取得することはできません。
なぜなら、他の酒類販売事業者のお酒と混ざってしまい、販売するお酒を適切に管理できない可能性があるからです。
ただし、例外的に他の販売業者と明確に区画割りがされており、専属の販売従事者の有無や、独自の代金決済場所が設けられており、他の酒類販売業者の営業と明確に区分されている場合には認められる可能性があります。
例えば、大きなショッピングモールのワンフロアに酒類販売免許を取得しているお店が複数ある場合などす。
この場合、それぞれのお店は区分けがしっかりとされてり、専属の従業員がお酒を販売しており、代金決済もそれぞれのお店で行えるため認められます。
一方で、狭いお店の棚の一部を賃借し、専属の従業員等を置かず、代金決済はお店のレジなどを使わせてもらう場合などは販売場として認められません。
適切な使用権限がない場所
酒類販売免許の販売場は適正な使用権限がある場所でしか取得することができません。
なぜなら、使用権限がない申請者に酒類販売免許を付与することは適切ではないからです。
適正な使用権限とは具体的には、土地や建物の所有者から申請場所で酒類販売免許の取得を許可されてい場合です。
例えば、何の使用権限もない人が勝手に他人の建物で酒類販売免許の申請をして免許が取れてしまうと、不正な営業が横行する可能性があります。
そのため、販売場の不動産登記簿や賃貸借契約書などを提出することで、適正な使用権限があることを証明する必要があるわけです。
したがって、又貸しで借りていて所有者から直接的に使用の許可をもらっていないケースや、販売予定場所で事業をすることが契約内容で認められていない場合には、不動産の所有者や貸主から使用承諾書を別途取得する必要があります。
使用承諾書について詳しくは「」の記事をご確認ください。
レンタルオフィス・バーチャルオフィス・自宅で取れる?

上記で解説したように、酒類販売免許は適正な使用権限と独立性のある場所でしか取得できません。
ただ、どのような物件で免許が取得できて、どのような物件では免許を取得できないのかを自分で判断するのは難しいです。
実際に、弊所にも以下のような物件で酒類販売免許を取得できるかについて多くのご相談をいただきます。
- バーチャルオフィス
- レンタルオフィス
- 一軒家
- マンション・アパート
以下では、それぞれの物件について、酒類販売免許の取得が可能かどうかを解説していきます。
バーチャルオフィス
バーチャルオフィスを酒類販売の販売場として免許を取得することはできません。
なぜなら、酒類販売場は必ず実在する場所でなければならないからです。
一方で、法人の住所がバーチャルオフィスでも、実店舗を借り、その場所を販売場としてお酒を販売する場合には免許の取得は可能です。
なぜなら、販売場が実在する場所であれば、本社住所がバーチャルオフィスでも基本的には酒類販売場の要件を満たしているからです。
レンタルオフィス
種類 | 取得可否 |
---|---|
個室タイプ | ◯ |
半個室 | △ |
フリーアドレス | × |
レンタルオフィスでは酒類販売免許を取得できるケースとできないケースがあります。
個室タイプのレンタルオフィスについては、営業所としての独立性があるので酒類販売免許の取得が可能です。
一方で、自分の場所が決まっていないフリーアドレスタイプのレンタルオフィスでは酒類販売免許の取得はできません。
また、半個室タイプのレンタルオフィスも物件の構造によっては取得が可能なケースもあれば、取得できないケースもあります。
一軒家
種類 | 取得可否 |
---|---|
自己所有 | ◯ |
賃貸 | △ |
自己所有の一軒家の場合、酒類販売免許を取得することは可能です。
ただし、リビングなどの生活スペースなどを酒類販売場とすることはできず、酒類販売事業を行う部屋を別途設ける必要があります。
一方、賃貸の一軒家に関しても物件の構造上は免許の取得が可能ですが、ほとんどの場合、賃貸契約書の目的の欄に「住居用」と記載されているため、所有者の使用承諾書が必要となります。
また、家族が所有者の場合でも家族から賃貸契約書や使用承諾書をもらう必要がある点は注意が必要です。
マンション・アパート
種類 | 取得可否 |
---|---|
賃貸マンション | △ |
賃貸アパート | △ |
自己所有分譲マンション | △ |
マンションやアパートの一室でも、建物の構造上は酒類販売免許の取得は可能です。
ただし、マンションやアパートの場合、賃貸契約書の目的欄に「住居用」と記載されているケースがほとんどです。
そのため、マンションのオーナーや管理会社から使用承諾書をもらう必要があります。
また、自己所有の分譲マンションの場合でも、酒類販売免許の取得はかなり難しいです。
なぜなら、分譲マンションでは管理規約に住居用としての使用しか認められていないケースがほとんどだからです。
そのため、管理組合から酒類販売免許の取得に関する使用承諾書をもらわなければならずハードルが高いです。
【注意】例外的に酒類販売場として認められないケース

ここまで酒類販売免許の販売場の要件について解説してきましたが、基本的には上記の要件を満たすことができれば酒類販売場として認められます。
ただし、地域や不動産によっては上記の要件を満たしても販売場として認められないケースがあります。
- 用途地域制限に該当する場合
- 農地法の制限に該当する場合
用途地域制限に該当する場合
用途地域制限区域では、酒類販売免許の販売場とすることができません。
用途地域とは、都市計画法に基づいて土地を用途ごとに区分した地域で、建物の用途や大きさを制限した区域のことです。
例えば、市街化調整区域では、原則として開発や建築が制限されており、新たに酒類販売の販売場を設置することは認められません。
因みに、用途地域に関しては市役所などに電話で確認することも可能です。
農地法の制限に該当する場合
農地法の制限に該当する土地では、酒類販売免許の取得ができません。
農地法では、農地を農地以外に使用することを規制しており、酒類販売場として申請する土地登記簿の地目が「農地」や「田」、「畑」となっている場合には農地以外で使用できないため、酒類販売場とすることはできません。
この場合、農地転用の手続きを行い地目を農地から変更した上で、酒類販売免許の販売場として申請する必要があります。
申請前に税務署や行政書士に相談する

酒類販売免許の販売場は建物や土地のよって、販売場として認められるかどうかが大きく異なります。
特に、用途制限や農地法の制限に関しては専門的な知識が必要となるので、なかなか自身での販売場が該当するのかどうかを判断するのは難しいです。
そのため、申請する前に、まずは税務署は行政書士などの専門家に酒類販売免許の販売場として問題がないのかを相談してみることです。
NAGASHIMA行政書士事務所では、全国の酒類販売業免許をサポートしておりますので、酒類販売免許の申請に関してお困りの場合には是非ご相談下さい。
酒類販売場に関するよくある質問

販売場と倉庫が別の場所でも問題ない?
酒類蔵置所設置報告書を提出すれば、酒類販売場とは別の場所にある倉庫にお酒を保管することも可能です。
蔵置所とは、酒類の販売業者が免許を受けている販売場所以外に販売目的で所持するお酒を保管する場所のことです。
そのため、酒類蔵置所報告書を提出すれば、販売場と別の場所にある倉庫にお酒を保管することができるようになります。
販売場を移転することはできませすか?
酒類販売場を移転することは可能ですが、移転申請が必要です。
そして、移転申請では新規申請の時と同じように移転場所の不動産登記簿や賃貸借契約書、使用承諾書などを提出しなければなりません。
これは、酒類販売免許が場所に与えられる免許であるため、その場所が酒類の販売場として相応しいかが新たに審査されるからです。
自宅を販売場にすることは可能?
自宅が一軒家などの場合には、酒類販売免許を取得できる可能性は高いです。
一方、自宅がマンションやアパートなどの集合住宅の場合には、酒類販売免許を取得できない可能性が高いです。
なぜなら、マンションやアパートなどでは賃貸契約書やマンションの管理規約において、事業を行うことが禁止されているケースが多いからです。
そのため、マンションやアパートのオーナー、管理会社、管理組合などから自宅で酒類販売免許の取得に関して許可がもらえない場合には免許の取得はできません。
販売場はどれぐらいの面積が必要?
酒類販売場の面積については明確な面積の要件はありません。
そのため、例えば通信販売や卸売業で販売場に在庫を置かない場合には、レンタルオフィスの1人部屋用のスペース(3㎡程度)でも取得は可能です。
ただし、事務所として実際に使用する部屋なので机や椅子、棚などを置けないような実質的に作業がでいないほどの狭い不ペースでの取得は難しいです。
複数の店舗でお酒を販売する場合は店舗ごとに免許が必要?
はい、酒類販売業免許は販売場ごとにその販売場の所在地の所轄税務署長から酒類販売業免許を受ける必要があります。
例えば、A株式会社がY市にあるコンビニで酒類販売免許を取得して販売しており、X市で新しいコンビニを出店してお酒を販売する場合、新店舗でも酒類販売免許を取得する必要があります。
まとめ
この記事のまとめ
- 主としてお酒を販売する場所が販売場
- ネット通販や在庫を置かない場合でも販売場は必要
- 飲食店や他の販売場と同一の場所を販売場にはできない
- 販売場は土地や建物の所有者から使用承諾が必要
- 自宅やレンタルオフィスを販売場にすることも可能
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所