酒類販売免許の変更

酒類販売業の事業承継で免許は譲渡できる?引き継ぎ方法や注意点は?

2025年9月2日

酒類販売業免許は事業承継で譲渡できる?

酒類販売業免許はどうやれば引継げる?

酒類販売業免許を事業承継により引継ぎたいという方も多いです。

結論を先にいうと、酒類販売業免許は原則的には引継ぐことができませんが、例外的に要件を満たせば引き継ぐことも可能です。

そこでこの記事では、酒類販売業免許の事業承継で免許を引継ぐ方法や注意点について分かりやすく解説します。

この記事を書いた人

長島 雄太

NAGASHIMA行政書士事務所

NAGASHIMA行政書士代表。酒類免許専門の行政書士。酒類許可に関するメディアサイト「酒類許可ナビ」を運営しており、酒類免許の相談実績1000件以上。酒類許可の取得率100%。詳しいプロフィールはこちら → [運営者情報]

酒類販売業の事業承継で免許は譲渡できる?

酒類販売業を事業承継したとしても、免許そのものを他人や別の会社に譲渡することは原則できません

なぜなら、酒類販売業免許は「その人(法人)が酒類販売を行うことを許可するもの」であり、取得者本人しか使えないからです。

イメージとしては、医師免許や運転免許を他人に譲れないのと同じ仕組みと考えると分かりやすいです。

そのため、事業を引き継いだ側はあらためて新規で酒類販売業免許を取得しなければなりません。

ただし特定の要件を満たせば免許条件は引継げる

事業を継承した場合でも、酒類販売業免許を新規で申請する必要があります。

ただし、以下の免許は、新規での取得が不可能または極めて難しいため、もし承継のたびに取り直しを求められると、引き継いだ事業そのものが継続できなくなってしまいます。

免許引継ぎの例外

  • ゾンビ免許(旧酒類販売免許)を引継ぐ場合・・・酒税法改正により新規での免許取得ができない
  • 全酒・ビール卸売業免許を引継ぐ場合・・・免許件数に制限があり自由に取得ができない
  • 酒類製造免許を引継ぐ場合・・・日本酒等の特定のお酒については新規で免許取得ができない

そのため、特定の要件を満たした場合に限り、免許の条件を引継ぐことができます。

酒類販売業免許のケース別引継ぎ要件

酒類販売業免許は、原則として事業者ごとに付与されるため、そのまま他人に譲渡することはできません。

しかし、事業承継においては、一定の要件を満たすことで免許を引き継ぐことが認められています。

そして、事業承継の方法は大きく分けて以下の2つがあり、それぞれ異なる要件が設けられています。

  • 法人成り等(法人成・法人の合併・会社分割)
  • 相続等(相続・親族や従業員への事業譲渡)

法人成り等(法人成・法人の合併・会社分割)

個人事業主が法人化する「法人成り」や、法人同士の合併、会社分割といったケースでは、酒類販売業免許を新たに取り直す必要があるのが原則です。(国税庁|お酒についてのQ&A-酒類製造・販売業免許関係(共通)Q2)

ただし、事業が継続できなくなる事態を避けるため、一定の要件を満たす場合には免許条件を引き継ぐことが認められています。

具体的には、法人成り等で免許の条件を引継ぐ場合、以下の要件を全て満たす必要があります。(国税庁Ι法令解釈通達-第9条1項関-14)

法人等の事業引継ぎ要件

  • 既存免許の取消と同時に申請すること
  • 申請者が酒類販売免許の要件を満たしていること
  • 既存免許と販売場が同じ場所であること
  • 既存免許の販売場が休業中でないこと

相続等(相続・親族や従業員への事業譲渡)

個人事業主が亡くなった場合や、事業を親族・従業員に譲渡する場合にも、酒類販売業免許をそのまま承継できる仕組みが設けられています。

ただし、免許の適正性を確保するため、誰でも引き継げるわけではなく、以下の要件を全て満たす必要があります。(国税庁Ι法令解釈通達-第19条1項関)

相続等の事業引継ぎ要件

  • 被相続人の個人名義の免許であること
  • 承継する人が親族又は3年以上働いた従業員であること
  • 販売場が同じ場所であること

酒類販売業免許の事業承継の引継ぎに必要な書類

酒類販売業免許の事業承継による免許の引継ぎに必要な書類は、法人成り等・相続等のどちらの方法で引き継ぐかによって異なります。

以下では、それぞれのケースに合わせた必要書類が紹介します。

法人成り等(法人成・法人の合併・会社分割)の必要書類

法人成りや合併・分割によって免許を引き継ぐ場合には、以下の書類が必要となります。

必要書類

  • 申請書
  • 免許要件誓約書
  • 履歴書
  • 定款のコピー
  • 法人の登記簿謄本
  • 直近3年の財務諸表のコピー
  • 地方税の納税証明書(都道府県)
  • 地方税の納税証明書(市区町村)
  • 不動産登記事項証明書(土地)
  • 不動産登記事項証明書(建物)
  • 賃貸契約書のコピー
  • 不動産所有者の使用承諾書
  • 既存の酒類販売業者の販売業免許についての書類
  • 免許申請書チェック表

一部書類の省略は認められているものの、基本的には新規免許申請と同様の書類の提出が必要となります。

それぞれの書類の詳細については酒類販売業免許の必要書類をご確認ください。

相続等(相続・親族や従業員への事業譲渡)の必要書類

相続や親族・従業員への事業譲渡で免許を引き継ぐ場合には、承継人が親族であることや従業実績があることを裏付ける書類が必要です。

具体的には、以下の書類を提出します。

必要書類

  • 戸籍謄本、戸籍抄本などの被相続人との関係が分かる公的書類(相続の場合)
  • 他の相続人の意思表示がわかる書類(相続の場合)
  • 事業譲渡に関する契約書(事業譲渡の場合)
  • 従業実績が分かる書類(事業譲渡の場合)
  • 酒類販売業免許の免許要件誓約書

また、税務署によっては上記以外の書類も求められるケースがあるので、事前に管轄の警察署に確認するようにしましょう。

酒類販売業免許を事業承継で引き継ぐ際の注意点

酒類販売業免許を事業承継で引き継ぐ場合、以下の点に注意が必要です。

  • 既存免許の取消申請は新規申請と同時に
  • ゾンビ免許ではネットでの販売実績が必要
  • 事業承継手続きは2~4カ月掛かる

既存免許の取消申請は新規申請と同時に

酒類販売業免許を法人成り等で引き継ぐ場合、最も重要なのは「既存免許の取消申請」と「新規免許の申請」を同時に行うことです。

先に取消だけを提出してしまうと引継ぎたい免許がない状態となり、事業を継続できなくなるおそれがあります。

そのため、事前に管轄の税務署に事業承継を行う旨を伝えた上で、取消申請と新規申請を同時に行うようにしましょう。

ゾンビ免許ではネットでの販売実績が必要

いわゆる「ゾンビ免許」(旧酒類販売業免許)を承継する場合には、単に事業を引き継ぐだけでは認められません。

ゾンビ免許で、過去にインターネットで酒類を販売していた実績があることが求められます。

そして、もし、インターネットでのお酒の販売実績がない状態でゾンビ免許を引継ぎた場合、「酒類の販売は通信販売を除く小売りに限る」という制限が付けられてしまう可能性があります。

そうなると、ゾンビ免許を引継ぐ意味がなくなってしまうので、事前に税務署と細かな調整を行いながら進めるようにしましょう。

事業承継手続きは2~4カ月掛かる

酒類販売業免許の事業承継は、申請してすぐに認められるものではありません。

税務署による審査や書類確認には、酒類販売免許の場合には約2か月、酒類製造免許の場合には約4カ月かかります。

また、必要書類に不備があったり、申請内容に記入ミスがあれば、さらに時間が延びるケースもあります。

そのため、事業承継のスケージュールは余裕をもって行うようにしましょう。

酒類販売業免許の事業継承で困ったら?

酒類販売業免許は、原則として引き継ぐことができず、例外的に引継ぎが認められているに過ぎません。

そのため、誰でも簡単に承継できるわけではなく、細かな要件や条件を満たす必要があります。

もし手続きを誤れば免許が引き継げず、結果として事業そのものが継続できなくなるリスクもあります。

さらに、事業承継の形は法人成りや相続などケースごとに異なり、それぞれで必要書類や進め方が変わります。

特に酒類販売業免許は複雑で、専門知識がない場合には手続きが大変です。

そのため、酒類販売業免許の事業承継で困っている場合には、行政書士に相談することをおすすめします。

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まとめ

この記事のまとめ

  • 酒類販売業免許は原則引継ぐことができない
  • 例外的に要件を満たせば事業承継が認められるケースがある
  • 要件を満たせば法人成り・会社合併・会社分割で事業承継が可能
  • 要件を満たせば相続・事業譲渡により免許を引継げる