酒類販売免許の種類

酒類製造業免許とは?|難易度や要件~取得方法・費用まで徹底解説 

酒類製造免許を取得するのって難しいの?

何から始めればいいのかわからない…

クラフトビールやワイナリーなど、酒類製造ビジネスへの関心が高まる一方で、免許取得の難しさに二の足を踏んでいる方は少なくありません。

結論からいうと、酒類製造免許は酒類関連の免許の中でも、最も取得難易度が高い免許のひとつです。

酒税が国の重要な財源であることに加え、最低製造数量基準、経営基盤、技術的要件など、クリアすべき要件が非常に多いからです。

この記事では、酒類製造免許の取得難易度や、必要な要件、申請の流れ、取得後の義務、さらには免許取得以外に自社ブランドのお酒を販売する選択肢までわかりやすくに解説します。

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この記事を書いた人

長島 雄太

NAGASHIMA行政書士事務所

NAGASHIMA行政書士代表。酒類免許専門の行政書士。酒類許可に関するメディアサイト「酒類許可ナビ」を運営しており、酒類免許の相談実績1000件以上。酒類許可の取得率100%。詳しいプロフィールはこちら → [運営者情報]

酒類製造業免許とはお酒をつくるために必要な免許

酒類製造業免許とは、ビール、日本酒、焼酎、ウイスキー、ワインなどのお酒をつくるために必要な許可のことです。

ここでいう「お酒の製造」とは、工場などの設備を使ってつくる場合だけではなく、お酒に水以外のものを混ぜてできあがったものが「お酒」と扱われるものができた場合も、酒類の製造にあたります(酒税法43条1項)。

例えば、市販のお酒に梅や果実を漬け込んで梅酒や果実酒をつくる行為は、基本的に「新しいお酒を製造した」とみなされるため、本来は酒類製造免許が必要です。

ただし、「自分が飲む」目的で作る分については例外的に認められており、免許がなくても可能とされています(国税庁「自家醸造」Q&A)。

一方で、飲食店が自家製のサングリアを仕込み、メニューとしてお客様に提供する場合は「提供」を目的とした製造なので、酒類製造免許が必要になります。

もし無免許で酒類を製造した場合、酒税法54条に基づき「10年以下の懲役または100万円以下の罰金」といった厳しい罰則を受ける可能性があり、さらに製造したお酒や原料、機械や器具などが没収されることもあります。

免許は「製造場所」と「お酒の品目」の組み合わせで交付される

お酒には様々な種類がありますが、酒税法ではお酒の品目を以下の17種類に分けています。

お酒の17品目一覧

  • 清酒
  • 合成清酒
  • 連続式蒸留焼酎
  • 単式蒸留焼酎
  • みりん
  • ビール
  • 果実酒
  • 甘味果実酒
  • ウイスキー
  • ブランデー
  • 原料用アルコール
  • 発泡酒
  • その他の醸造酒
  • スピリッツ
  • リキュール
  • 粉末酒
  • 雑酒

そして、酒類製造免許は製造しようとする酒類の品目別に酒類製造免許を取得しなければなりません。

例えば、ビールとワインを製造したい場合には、ビール製造免許だけではなく果実酒製造免許も取得しなければなりません。

酒税法における品目について詳しく知りたい方はお酒の品目をご確認ください。

酒類製造免許の取得難易度はかなり高い

酒類製造免許は、酒類に関連する免許の中でも最も取得が難しい免許のひとつです。

その理由は、要件が厳しいだけでなく、国税庁が提出書類や経営体制、設備の状況まで細かく確認し、簡単には許可を出さないからです。

酒税は国にとって重要な財源であり、製造者には高い信頼性と適切な管理体制が求められます。

また、既存の酒造業者を保護する目的もあり、新規参入には高いハードルが設けられています。

特に大きな壁となるのが「最低製造数量基準」です。

たとえば、ビールなら年間60キロリットル、果実酒やリキュールは6キロリットル以上の製造能力が必要で、趣味レベルや小規模での参入はできません。

国内販売用の日本酒製造免許については実質取れない

清酒(日本酒)の製造免許については、さらに取得が困難です。

日本酒市場にはすでに十分な供給があるとされており、新しく日本酒を作りたい人に対しては、免許がほとんど出されていません。

これは、今ある酒蔵を守るための国の方針でもあります。

そのため、国内で日本酒を販売するための免許を新たに取るのは、今の制度ではほぼ不可能です。

ただし、海外向けに輸出する専用の免許や、すでに免許を持っている酒蔵を引き継ぐ場合であれば、免許を取得を取得できる可能性はあります。

酒類製造免許を取得するための4つの要件

酒類製造免許を取得するには、法律で定められた要件を全て満たす必要があります。

具体的には、人的要件、場所的要件、経営基盤要件、技術的要件、需給調整要件、そして最低製造数量要件の5つです。

以下、それぞれの要件についてわかりやすく解説します。

①人的要件(欠格事由がないか)

申請者が免許を持つにふさわしい人物かどうかが審査されます。

酒税は国の重要な財源であるため、法律を守り、きちんと納税できる信頼性のある人にだけ免許を与える必要があるからです。

欠格事由

  • 過去に酒類販売やアルコール事業の免許を取り消されたことがある人
  • 2年以内に税金の滞納処分を受けたことがある人
  • 過去3年以内に税金や酒類販売に関する法律違反で罰金を受けた人
  • 20歳未満にお酒を提供したり、暴力行為で罰金を受けた人
  • 過去3年以内に拘禁刑以上の刑を受けた人

なお、法人が申請する場合は、社長だけでなく役員全員がこれらの条件をクリアしている必要があります。

役員の中に一人でも該当者がいれば、会社全体として免許を取得できない点は注意が必要です。

②場所的要件(適切な製造場所か)

酒類の製造場所は、酒場や料理店などと同じ場所ではなく、明確に区分されている必要があります。

これは、製造したお酒が店内でそのまま提供されると、製造量と販売量の区別があいまいになり、酒税の計算が正確にできなくなる恐れがあるためです。

もし製造場所が飲食店などと隣接している場合は、図面上ではっきり分かれていることに加え、必要に応じて壁や扉などで物理的に仕切りを設けなければならない可能性もあります。

また、賃貸物件を使う場合には、賃貸借契約書に「酒類製造に使用できる」旨の記載があるか、もしくは大家さんの承諾書を準備する必要があります。

あわせて、建物が建っている地域によっては建築基準法の「用途地域」の制限を受けるケースもあるので、市区町村の窓口で事前に確認しておきましょう。

③経営基礎要件(資金と販売能力)

事業を安定して継続できる経営基盤があることが求められます。

酒税は製造後に納付するため、納税能力がない事業者に免許を与えると、税金の未納リスクが生じるからです。

具体的には、以下の条件を全て満たす必要があります。

経営基礎要件

  • 国税・地方税の滞納がないこと
  • 破産手続き中でないこと
  • 申請前1年以内に銀行取引停止処分を受けていないこと
  • 法人の場合、債務超過になっていないこと
  • 法人の場合、過去3年連続で資本金の20%超の赤字でないこと
  • 今後納付する酒税の3〜4ヶ月分に相当する担保を提供できること
  • 酒造りに必要な知識と経験があること
  • 製造・貯蔵に必要な設備と人員を確保できること
  • 原料を安定的に入手できるルートがあること
  • 酒類の適正な販売管理体制を構築できること

これらの要件により、税金をきちんと納め、長期的に安定した酒造りができる事業者だけに免許が与えられる仕組みになっています。

④技術的要件(製造技術と設備)

酒類製造免許を取得するには、酒造りに必要な技術と設備の両方を備えていることが求められます。

安全で品質の安定した酒を継続的に製造するには、専門知識と適切な設備が不可欠だからです。

具体的には、以下の2つの条件を満たす必要があります。

技術面の条件

  • 醸造に関する専門知識があること
  • 衛生管理の知識があること
  • 一定水準の品質を保てること
  • トラブルが起きた際に対応できる能力があること

技術面の条件

  • 製造・貯蔵に必要な機械、器具、容器などが揃っていること
  • 工場立地法、下水道法、水質汚濁防止法、食品衛生法などの関連法令に適合していること
  • 地方自治体の条例にも違反していないこと

単にお酒を造れるかだけでなく、安全性と品質を維持しながら事業として継続できる技術力と、法令を遵守した製造環境の両方を備えているかが審査されます。

⑤最低製造数量要件

免許を取得したあとの1年間で、法律で決められた「最低製造数量」以上のお酒を作る能力が求められます。

これは、小規模な酒造業者がたくさんできてしまうと、税務署が酒税をきちんと管理するのが難しくなり、税金の徴収に手間や費用がかかってしまうためです。

また、ある程度の規模で事業を行うことで、長く続けられる見込みが立ち、安定して税金を納めてもらえることも期待されています。

なお、最低製造数量は酒の種類ごとに異なっており、以下のように定められています。

最低製造数量酒類の種類
年間60キロリットル以上清酒(日本酒)、合成清酒、連続式蒸留焼酎、ビール
年間10キロリットル以上単式蒸留焼酎、みりん
年間6キロリットル以上果実酒(ワイン)、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー、発泡酒、スピリッツ、リキュール、その他の醸造酒、粉末酒、雑酒

酒類製造免許の取得にかかる期間は4ヶ月が目安

酒類製造免許の取得には、審査期間だけでも約4ヶ月、準備期間を含めると半年から1年以上かかります。

国税庁が定める「標準処理期間4ヶ月」とは、あくまで申請書が税務署に正式に受理されてから許可が下りるまでの審査期間のことです。

実際には、事業計画の作成や物件や設備の確保など、申請前の準備に相当な時間を要するため、全体のスケジュールはさらに長くなります。

一般的な手続きの流れと必要期間は、次のとおりです。

段階期間主な内容
申請前の準備3〜6ヶ月税務署との事前相談、書類の作成と修正、物件や設備の確保、資金調達
税務署の審査4ヶ月申請書受理後の標準処理期間
合計7ヶ月〜1年準備から許可取得まで

特に酒類製造免許の申請は書類の作成が複雑で、必要な書類も多く時間が掛かるので、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。

酒類製造免許の申請から交付までの全6ステップ

酒類製造免許は、満たすべき要件が多く、準備にも時間がかかります。

とくに、製造場所や設備を整えるには相応の費用が必要になるため、どの段階で何をするのかを早めに把握しておくことが重要です。

ここでは、申請を検討し始めてから免許が交付されるまでの流れを、6つのステップに分けて解説します。

ステップ1:税務署への事前相談(まず要件を確認)

まずは、酒類製造場を設けようとしている住所を管轄する税務署にアポイントを取って事前相談をします。

事前相談なしでいきなり申請することも可能ですが、書類の不備があると補正を求められ、補正が完了するまで審査が進まず、結果的に時間が掛かってしまいます。

そのため、事前に相談してから申請することを強くおすすめします。

相談時には、以下の情報を伝えましょう。

メモ

  • 製造したい酒類の種類(ビール、ワイン、日本酒など)
  • おおまかな事業計画(年間製造予定量、販売先など)
  • 想定している物件の情報(場所、広さ、建物の種類)

酒類指導官が、相談時の内容を元に取得可能性や要件を満たしているかなどを簡単に確認してくれます。

この段階で「この物件では製造できない」「資金計画が不十分」といった問題が判明すれば、申請前に修正できるため、結果的に無駄な時間や費用を掛けずに済みます。

ステップ2:製造場所の選定(要件に合った物件を探す)

物件を契約する前には、必ず「この場所で酒造ができるかどうか」を確認しておきましょう。

土地の用途制限や建物の構造、賃貸契約の条件などは、契約後に変更することが難しいためです。

もし契約後に「酒類製造場としては使えない」と分かってしまえば、敷金や仲介手数料が無駄になるだけでなく、最初から物件探しをやり直すことになってしまいます。

また、賃貸契約書に「酒類製造業として使用できる」旨が明記されているか、あるいは大家さんからの承諾書があるかどうかも、事前にしっかり確認しておく必要があります。

大家さんの承諾が得られていない物件では、酒類製造免許の申請が通らないためです。

少しでも不安がある場合は、物件の図面や契約書の原案を持って、あらためて税務署に相談しておくと安心です。

ステップ3:設備・資金の準備

製造に必要な設備の準備と資金調達を行います。

設備については、製造・貯蔵に必要な機械や容器などを揃える必要があります。

これらの設備は、食品衛生や環境保護などの関連法令に抵触しないものでなければなりません。

ただし、高額な設備の場合は、発注書や契約書があれば「設置予定」として認められるケースもあります。

資金については、自己資金だけで賄うのが難しい場合、事業計画書を作成して融資を受けることができます。 

具体的には、日本政策金融公庫や地域の信用金庫などに事業の将来性や返済計画を示すことで、開業資金の融資を受けられます。

また、将来納める酒税の3〜4ヶ月分を担保として提供できる資金力も必要です。

自己資金や融資、場合によっては補助金やクラウドファンディングなども組み合わせて、必要な資金を確保しましょう。

ステップ4:申請書類の作成・提出

申請書類を作成し、必要な添付書類を揃えて税務署に提出します。

提出書類は非常に多いため、事前に何が必要かを税務署での相談時に確認し、計画的に準備しましょう。

 書類の不備があると審査が大幅に遅れてしまう可能性があるので注意が必要です。

そのため、すべての書類が揃ったら、提出前に一度税務署で事前確認を受けておくと安心です。

このひと手間で、受理後の修正依頼を減らすことができ、結果としてスムーズに審査が進みやすくなります。

書類が正式に受理されて受理印が押された日から、標準処理期間である4ヶ月の審査が始まります。

また、書類作成に不安がある場合は、酒類製造免許に詳しい行政書士に依頼するのがおすすめです。

ステップ5:申請内容の審査

申請が受理されると、税務署による審査が始まります。

審査では、提出書類に不備がないか、また内容に無理がなく、実現可能な計画になっているかどうかが確認されます。

具体的には、事業計画や資金の見通し、販売先の確保状況などがチェックされます。

また、必要に応じて税務署の担当者が製造場を訪問し、設備が申請通りに設備が整っているか、製造場と他のスペースが適切に区分されているかなどを確認することもあります。

審査の途中で、追加の資料や説明を求められることも少なくありません。

このような要請があった場合、追加書類が提出されるまで審査が一時中断されるため、できるだけ早く対応するようにしましょう。

ステップ6:免許交付

審査を無事通過すると、税務署から電話で免許交付の連絡が入ります。

連絡を受けたら、登録免許税15万円を納付し、税務署で免許通知書を受け取りに行きます。

これで酒類製造免許の取得は完了です。

ただし、酒類製造免許を取得しただけでは、まだお酒の製造を始めることはできません。

なぜなら、別途、保健所から「食品衛生法に基づく酒類製造業の営業許可」も取得する必要があるからです。 

酒類製造免許は税務署が「酒税に関する観点」から認める許可であり、営業許可は保健所が「食品衛生の観点」から認める許可です。

両方を取得して初めて、お酒の製造を開始できます。

【注意】酒類製造業の営業許可も取得する必要がある

お酒をつくって販売するには、税務署の「酒類製造免許」だけでなく、保健所の「酒類製造業の営業許可」も必要です。

これは、お酒が食品にあたるため、安全に製造・提供できる環境かどうかを保健所が確認する必要があるからです。

衛生的でない環境で作られたお酒は、健康被害につながるおそれがあります。

特に注意が必要なのは、製造スペースと飲食スペースをひとつの場所にまとめる「ブリューパブ」などの形態です。

この場合、つくる場所と飲む場所をしっかり分けたうえで、換気や水回り、掃除のしやすさなど、税務署と保健所の両方のルールを満たす必要があります。

もし、どちらか一方の基準だけを考えて内装を進めてしまうと、後からもう一方の基準を満たせず、大きな工事をやり直すことになるおそれもあります。

そのため、物件を決める前の段階で、税務署と保健所の両方に相談し、どちらの許可も取れるかをしっかり確認してから契約するのがおすすめです。

酒類製造免許の取得に掛かる費用は約16万円

項目費用
登録免許税(1品目)15万円
公的書類の取得費用数千円~1万円
合計約16万円

酒類製造免許を取得する際には、登録免許税として1品目につき15万円が必要です。

これは清酒、果実酒、ビール、焼酎、ウイスキーなど、酒類の種類を問わず共通の金額です(酒母の製造免許、もろみの製造免許を除く)。

また、申請にあたっては登記簿謄本や納税証明書などの公的書類を取得する必要があり、これらの取得費用として数千円から1万円程度が別途かかります。

そのため、酒類製造面免許の取得に掛かる初期費用は、おおよそ16万円前後と考えておくとよいでしょう。

なお、ここでいう費用はあくまで登録免許税と書類取得費用のみであり、製造設備の導入費用や専門家への相談・依頼費用は含まれていません。

たとえば、小規模なビール醸造所であっても、設備費用だけで数百万円から一千万円規模になるのが一般的です。

行政書士の代行費用の相場は50~100万円前後

項目行政書士事務所の相場NAGASHIMA行政書士事務所
登録免許税15万円15万円
公的書類の取得費用数千円~1万円数千円~1万円
行政書士の報酬50~100万円50万円
合計56~116万円前後56万円前後

酒類製造免許の申請を行政書士に依頼する場合、代行費用の相場は50~100万円前後です。

これは申請書類の作成から税務署との事前交渉、製造場所の現地調査、必要書類の収集、申請手続きまで、専門的で複雑な作業を代行してもらうための費用です。

中には、それだけの高額な費用が掛かるなら、自分で申請して費用を浮かせたいと考える方もいるかもしれません。

確かに、かなりの時間を掛けて何度も税務署への相談に足を運べば不可能ではありません。

しかし、申請にはかなりの専門知識が必要で、不備があると審査が長引いたり不許可のリスクもあります。

そのため、酒類製造免許を取得するなら、間違いなく専門家に依頼することをおすすめします。

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免許取得後に製造者に課される3つの法的義務

酒類製造免許を取得すれば、いよいよ製造を始められますが、免許取得はあくまでスタート地点にすぎません。

製造者には、取得後も法律で定められたさまざまな義務が課されており、これを怠ると免許取消や罰則を受けるリスクがあります。

ここでは、すべての酒類製造者に共通して課される「記帳義務」「申告義務」「届出義務」という3つの基本的な法定義務について解説します。

記帳義務

製造者は毎日の製造活動を帳簿に記録し保存する義務があります。

これは酒税法第46条で定められた「記帳義務」で、違反すれば1年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処される可能性があります。免許取消の対象となる重要なルールです。

記録する内容は大きく4つに分かれます。

記帳内容

  • 原料の記録・・・いつ・何を・どれだけ・誰から仕入れたかを記録
  • 製造過程の記録・・・麹・酒母・もろみごとに使った原料や製造日、できあがった量とアルコール度数を記録
  • 貯蔵の記録・・・タンク間の移動や水で薄めた記録
  • 出荷の記録・・・いつ・どこに・何を・どれだけ出荷したかを記録

記録する際は、課税に関わる数量はミリリットル単位で正確に測定します。

ただし設備の都合で測定が難しい項目は省略できる場合もあります。

帳簿は製造場に置いておき、閉鎖後も7年間保存が必要です。

もちろん、手書きでもパソコンでも構いませんが、データの場合は必ずバックアップを取ってください。

申告・納税義務

製造者は、酒類の製造量や出荷状況について、定期的に税務署へ申告する義務があります。

これは、酒税を正確に計算し、適正な課税を確保するために酒税法47条で定められている重要な手続きです。

申告の内容は、大きく次の2種類に分けられます。

  • 製造に関する申告・・・製造場の場所、設備の内容、製造の開始・休止・終了、製造方法についての報告
  • 年度報告・・・毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間で、どれだけ製造し、どれだけ出荷したか、年度末に在庫がどれだけ残っているかの報告

これらの申告は税務署が製造状況を把握し、適正な課税を行うための重要な資料となります。

申告漏れや虚偽申告は酒税法違反として免許取消や刑事罰の対象となるため、期限を守って正確に申告するようにしましょう。

届出義務

酒類製造者は事業で重要な変更や事故があったときは、酒税法第50条の2により税務署へ届け出る義務があります。

具体的には、事前に届出が必要な場合と事後に届出が必要な場合に分かれます。

届出のタイミング届け出る内容例外・補足
事前製造場や保税地域以外の場所で酒を詰め替える場合頻繁に行う場合は、事前にまとめて届出可能
事故後すぐ火災や地震などで酒・酒母・もろみが失われたとき少量(100リットル未満、ビールなどは400リットル未満)で帳簿記録がある場合は、1か月分まとめて届出可能
事故後すぐ腐敗して飲めなくなったとき製造工程の通常の不合格品は、1か月分まとめて届出可能

もし、上記の届出を怠った場合には、1年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処される可能性があるので注意してください(酒税法第58条12)。

酒類製造免許の取得以外に自社ブランドのお酒を売る方法

酒類製造免許の取得が難しい場合は、OEM(委託醸造)を活用することで、比較的簡単に自社ブランドの酒類事業に参入できます。

OEMを選ぶ最大の理由は、酒類製造免許と比べて必要となる酒類卸売業免許や酒類小売業免許の取得難易度が圧倒的に低い点です。

酒類製造免許は冒頭でも触れましたが、酒類免許の中で最も取得難易度が高い免許です。

一方、OEMでお酒を販売するのに必要となる自己商標卸売業免許や、一般酒類小売業免許通信販売酒類小売業免許の取得難易度は比較的低いです。

そのため、以下のような場合にはOEMの活用が適しています。

おすすめのケース

  • 初期投資を抑えたい場合・・・製造設備に数千万円を投資するリスクを避け、まずは小ロットで市場の反応を確認したい
  • 製造技術やノウハウを持たない場合・・・委託先の技術を活用することで、品質の高い商品を安定的に供給できる
  • 販売やマーケティングに注力したい場合・・・製造を外部に任せることで、ブランディングや販路開拓に経営資源を集中できる

具体的には、自社ブランドのコンセプトを酒造メーカーに持ち込み、製造を依頼します。

たとえば「地元の果物を使った果実酒を作りたい」という場合、果実酒製造免許を持つメーカーに委託すれば、自社ブランドとして販売できます。

ただし、委託先が設定する最低製造量を満たす必要があったり、自社製造に比べて利益率が低くなるといったデメリットもあります。

とはいえ、こうしたデメリットはありますが、OEMで販売実績を積み、商品が売れるという確信を得てから自社製造に移行するという段階的なアプローチも有効な選択肢です。

無免許製造の罰則と自家醸造(梅酒等)の例外

無免許で酒類を製造した場合、酒税法により10年以下の懲役または100万円以下の罰金に処される可能性があります。

しかも、販売目的であるかどうかを問わず、アルコール度数1度以上の飲料を発酵させれば「酒類の製造」に該当してしまいます。

つまり、自宅でビールやワインを造る行為は、「趣味だから」「自分で飲むだけだから」といった理由があっても違法です。

実際に、家庭内での酒造りが発覚し、罰金刑を受けた事例も複数報告されています。

一方で、例外的に認められているのが自家消費を目的とした梅酒づくりです。

アルコール度数20度以上の酒類に梅や果実を漬け込む行為は、発酵を伴わず、既存の酒類に風味を付けるものに過ぎないため、「製造」には該当しないとされているからです。

ただし、この梅酒を販売した場合は酒類販売業免許違反となるため、あくまで自分で飲む場合に限られます。

詳しくは、酒税法違反とは?通報でバレる?メルカリ転売や自家製梅酒の落とし穴の記事をご確認下さい。

酒類製造免許に関するよくある質問

酒類製造免許について、初心者が疑問に思う代表的なポイントをQ&A形式で解説します。

マンションの一室でも免許は取れますか?

用途地域や管理規約、設備要件の観点から極めて難しいです。

住居専用地域では工場設置が認められず、マンションの管理規約でも事業用途が禁止されているケースが大半です。

仮に規約上問題がなくても、製造設備(大型タンク、ボイラー等)の搬入や排水処理の問題で、物理的に実現不可能なケースも多いです。

登録免許税はいつ払いますか?

免許交付の通知を受けた後、交付を受ける前に納付します。

税務署から「免許を付与する」という連絡が入り、税務署で免許通知書を受け取ります。

その際に、登録免許税15万円を近くの金融機関での納付し、領収証を登録免許税納付書に貼付して税務署に提出します。

納付確認後に正式な免許証が交付される流れとなります。

行政書士に依頼した場合の費用相場は?

酒類製造免許の申請を行政書士に依頼する場合、報酬の相場は50万円から100万円程度です。

これは申請書類の作成、税務署との事前交渉、必要書類の収集など、専門知識を要する複雑な業務を代行してもらう必要があるためです。

ただし費用は事務所や依頼内容によって大きく異なります。

特に遠方の行政書士に依頼する場合、報酬に加えて出張費や日当なども加算されるため、総額が100万円を超える可能性もあります。

そのため、依頼する前に必ず複数の事務所から見積もりを取り、サポート内容と費用を比較検討することをおすすめします。

個人でも酒類製造免許を取得できますか?

はい、個人でも酒類製造免許の取得は可能です。

ただし、個人・法人を問わず、同じ要件(人的要件、場所的要件、経営基盤要件、技術的要件、最低製造数量要件)を満たす必要があります。

そのため、酒類製造に関する知識や経験、相応の資金力と事業規模が求められる点は注意が必要です。

まとめ

この記事のまとめ

  • 酒類製造免許の取得難易度はかなり高い
  • 趣味や小規模ビジネスで酒類製造免許は取得できない
  • 酒類製造免許以外に酒類製造業の許可が必要
  • 自社ブランドのお酒は酒類製造免許以外でもできる

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