
酒類販売免許の申請には「取引承諾書」の提出を求められる場合があります。
しかし、取引同意書について「どこからもらえばいいの?」、「どうやって書けばいいの?」と悩む方も多いのではないでしょうか?
この記事では、取引承諾書の必要な場合や取得方法、具体的な記入例について解説します。
また、記事中に酒類販売免許の申請に使える取引承諾書のテンプレートを配布しているので、欲しい方は是非ダウンロードして活用してください。
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酒類販売免許の取引承諾書とは?

酒類販売免許の取引同意書とは、免許取得後に酒類の仕入れ先や販売先が確保されていることを税務署に証明するための書類です。
この書類には、酒類販売免許を取得後に安定して継続的に酒類の取引予定があり、それを仕入先・販売先が承諾していることが記載されています。
なぜ、酒類販売免許に取引同意書が必要?
酒類販売免許を取得するには、適切にお酒を販売できる環境が整っているか必要があります。
具体的に、酒類販売免許の申請では以下の点について審査されます。
そのため、取引同意書を提出することで、適切な仕入先・販売先があり、申請書の事業計画の信頼性を確認するために提出が求求められます。
取引同意書が必要な場合と不要な場合

取引同意書は全ての酒類販売免許において提出が求められるわけではありません。
国税庁の「酒類卸売業免許申請の手引」では、酒類卸売業免許申請の場合は予定仕入先及び予定販売先の取引承諾書の添付が必要で、小売業免許申請の場合には省略が可能と記載されています。(P48 注1)
そのため、酒類卸売業免許を申請する際に、取引承諾書を仕入先と販売先からもうらうようにしましょう。
免許の種類 | |
---|---|
取引同意書が必要なケース | ・輸出卸売業免許 ・輸入卸売業免許 ・洋酒卸売業免許 ・ビール卸売業免許 ・全種類卸売業免許 ・自己商標卸売業免許 ・店頭販売酒類卸売業免許 ・協同組合員酒類卸売業免許 ・特殊酒類卸売業免許 |
取引同意書が不要なケース | ・一般酒類小売業免許 ・通信販売酒類小売業免許 |
取引同意書は誰からもらえばいい?
酒類販売免許の申請時に必要な取引承諾書は、酒類の仕入れ先と販売先のそれぞれ1社以上から取得しなければなりません。
また、仕入れ先及び販売先に関しては、それぞれ適切な免許を持っている必要があります。
取引相手 | 仕入先の免許の種類 | 具体例 |
---|---|---|
仕入先 | 酒類製造免許・酒類卸売業免許 | 酒蔵、ワイナリーブリュワリー、商社、問屋、インポーターなど |
販売先 | 酒類卸売業免許・酒類小売業免許 | 商社、問屋、インポーター、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、酒屋、ワインショップなど |
取引同意書をもらう仕入先
まず、取引承諾書をもらう仕入先については、基本的には酒造メーカーか酒類卸売業社のどちらかになります。
なぜなら、酒類卸売業者がお酒を仕入れられるは酒造メーカーや酒類卸売業者しかないからです。
つまり、酒類小売業免許を持っている酒類販売業者からは仕入先とはならないので注意してください。
取引同意書をもらう販売先
一方、販売先については、基本的には酒類卸売業者か酒類小売業者かのどちらかになります。
因みに、飲食店や居酒屋、BAR、クラブなどには、基本的には酒類小売業免許を持っていないので販売先とはならない点に注意が必要です。
取引承諾書はどうやってもらえばいい?
酒類卸売業免許を取得するには、必ず、仕入れ予定先と販売予定先の取引承諾書を添付しなければなりません。
そのため、基本的に酒造メーカーや酒類卸売業者に関しては取引承諾書を認識しているので、取引する予定が場合には、取引承諾書をわたすことで問題なく記載してもらえるかと思います。
一方で、販売先となる酒類小売業者に関しては、取引承諾書の存在を知らないケースもあるので、酒類卸売業免許の申請に必ず必要であることを説明して記載してもらうようにしましょう。
取引同意書の記載例とテンプレート

上記は酒類販売免許の取引同意書の具体的な記載例です。
特に以下のポイントに注意して取引同意書を記載してもらうようにしましょう。
注意ポイント
①酒類販売免許の申請者名を記載
酒類販売免許を取得する申請者の名前を記載します。間違って取引先の名前を記載しないように注意してください。
②取引する予定の酒類の品目を記載する
免許取得後に取引する酒類の品目を記載します。
③書類作成日を記載
取引相手が書類を記入した日付を書けば問題ありません。
④取引予定先の住所を記載
取引先の酒類販売業免許を取得している住所を記載するようにしてください。また、審査の際に取引先の酒類販売免許の有無が確認されるため、取引先の免許を取得している場所が住所とは異なる場合には、その住所も合わせて記載しておくとスムーズです。
⑤取引予定先の名所・代表者名・印鑑
取引先の名称・代表者を記入し、押印します。
取引同意書に記載すべき内容
取引承諾書には決まった様式はありません。
そのため、基本的には自身で取引承諾書を作成する必要がありますが、以下の内容については必ず記載するようにしましょう。
- 宛名
- 免許取得後の酒類の取引を承諾している旨
- 取引する品目
- 日付
- 住所
- 名称・代表者名
- 印鑑(又は署名)
取引承諾書のテンプレート
ただ、自分で作成するとなると、どのような形式で作成すればいいのかわからないという方も多いと思います。
そこで、弊所が実際に酒類販売免許の申請で使用している取引承諾書テンプレートのダウンロードリンクを置いておきますのでご自由にお使いください。
取引同意書を取得する際の注意点

酒類卸売業免許の申請において、取引同意者はとても重要な書類です。
また、書類を取得するのに最も時間のかかる書類の一つでもあります。
できるだけ酒類卸売業免許をスムーズに取得する為にも、以下の点に注意して取引承諾書を取得するようにしましょう。
仕入先の免許が適切であること
酒類卸売業免許は、酒造メーカーや酒類卸売業免許を持っている酒類販売業者からしか仕入れられません。
つまり、酒類小売業免許しかもっていない酒類販売業者を仕入されとして取引承諾書をことができないのです。
また、輸出卸売業免許しか持っていない業者も、輸出しかできない点は注意が必要です。
そのため、酒類卸売業免許の仕入れ先として適切な免許を持っているかどうかを必ず確認するようにしましょう。
取引する品目が適切であること
免許の種類 | 取扱可能なお酒の品目 |
---|---|
洋酒卸売業免許 | 洋酒に限る(果実酒、甘味果実酒、ウイスキー、ブランデー、発泡酒、その他の醸造酒、スピリッツ、リキュール、粉末酒及び雑酒) |
輸出卸売業免許 | 全種類 |
輸入卸売業免許 | 全種類(自己が輸入したお酒に限る) |
自己商標卸売業免許 | 全種類(自己商標に限る) |
酒類卸売業免許は、免許の種類によって取扱い可能なお酒の品目が異なります。
そのため、取引同意書の品目に関しては、取得予定の免許で取扱い可能な品目が正しく記載されているかを確認してください。
例えば、洋酒卸売業免許を取得するにも関わらず、取引承諾書の品目が「全種類」となっていた場合や、「焼酎」「日本酒」などの取り扱いができない品目が入らないようにしましょう。
販売先が適切な酒販免許を持っていること
酒類販売免許の種類の記事でも詳しく解説していますが、酒類卸売業免許でお酒を販売できるのは、あくまでも酒類販売免許を持っている業者に限ります。
そのため、販売先については酒類販売業者から取得する必要があります。
そして、ここで注意が必要は点は、飲食店や居酒屋、BAR、クラブなどは基本的には、適切な販売先とはなりません。
なぜなら、飲食店や居酒屋、BAR、クラブはお酒を取扱ってはいますが、酒類販売免許を持っている業者ではないからです。
そのため、販売先となる取引相手が、酒類卸売業免許や酒類小売業免許を持っているか必ず確認するようにしてください。
取引先が海外の場合には和訳をつける
国内の取引先であれば、日本語の取引承諾書を渡して署名をもらうことが可能です。
しかし、海外の取引先に対しては、日本語の書類では内容を理解できないため、署名を得るのが難しい場合があります。
そのため、基本的には日本語の取引承諾書を相手国の言語や英語に翻訳し、相手に提供するのが望ましいです。
ただし、外国語や英語の書類だけでは、税務署の担当者が内容を正確に理解できない可能性があるため、外国語の取引承諾書に署名をもらった後、税務署に提出する際には日本語訳を添付するようにしましょう。
酒類販売免許の取引同意書に関するよくある質問

取引承諾書をもらうのは難しい?
取引承諾書は免許を取得する前に、取引先からもらう必要があります。
免許取得前の契約を結んでいない相手に対して、承諾書にサインを書くことに抵抗のある取引先も少なくありません。
そのため、これまでに取引実績がない取引相手から取引承諾書をもらうのは少しハードルが高いかもしれません。
取引承諾書の記入をお願いして断れることはある?
仕入先や販売先に取引承諾書の記入を断れる可能性は十分にあります。どうしてもビジネスにおいては簡単に書面にサインはできないからです。
ただ、もし取引承諾書の記入を断られた場合でも諦める必要はありません。
例えば、取引承諾書に記載されている内容を変更することで、取引先が記入を承諾してもらえたというケースも多いです。
そのため、もし取引承諾書の記入が断られた場合でも諦めずに書面の内容を修正するか、行政書士等の専門家に相談することをおすすめします。
取引承諾書をもらった相手と必ず取引しないといけない?
酒類販売免許の取得後は、取引承諾書と取引するのが基本です。
なぜなら、その取引先と取引するという前提での申請内容や事業計画を提出し許可を取得しているからです。
ただ、取引承諾書をもらった相手としか取引をしてはいけないというわけではなく、その他の取引先と取引をすることは自由です。
また、場合によっては免許取得後に双方の契約内容が合意に至らなかったなど事情がある場合には、取引をしなかったとしても特に問題はありません。
まとめ
この記事のまとめ
- 取引承諾書とは仕入先や販売先が確保されていること証明する書類
- 取引承諾書は酒類卸売業免許を取得する際に必要
- 仕入先の取引承諾書は酒造メーカーや酒類卸売業者
- 販売先の取引承諾書の相手は酒類卸売業者か酒類小売業者
- 酒販免許がない飲食店やレストランは販売先にならない
長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所