免許取得後の手続き

酒類の詰め替え販売とは?量り売りとの違いや必要な届出・許可を解説

お酒の詰め替え販売をしたいけど何をすればいいの?

酒類販売免許だけでは詰め替え販売はできないってホント?

実は、酒類販売免許を持っているだけでは詰め替え販売はできません。

詰め替え販売には、税務署への事前届出と保健所の許可が必須です。

無届けでの詰め替えは、免許取消や罰則の対象となり、最悪の場合、事業継続が困難になる可能性があります。

この記事では、詰め替え販売に必要な手続き、量り売りとの違い、届出が必要なケース、ラベル表示のルール、そして違反した場合の罰則まで、わかりやすく解説します。

これからお酒の詰め替え販売をしたいという方は是非最後まで読んで下さい。

この記事を書いた人

長島 雄太

NAGASHIMA行政書士事務所

NAGASHIMA行政書士代表。酒類免許専門の行政書士。酒類許可に関するメディアサイト「酒類許可ナビ」を運営しており、酒類免許の相談実績1000件以上。酒類許可の取得率100%。詳しいプロフィールはこちら → [運営者情報]

酒類の詰め替え販売とは?

酒類の詰め替え販売とは、お酒を元の容器から別の容器へ移し替えて販売することです。

酒類販売免許を持っていれば詰め替え販売ができるのですが、必ず税務署への届出が必要になります(酒税法第50条の2)。

単に酒類販売業免許を持っているだけでは認められません。

もし届出をせずに詰め替えを行うと、最悪の場合、免許取消や罰則の対象となるため、注意が必要です。

酒類の量り売りとの違い

「詰め替え」と「量り売り」は、どちらもお酒を別の容器に移す行為ですが、何を商品として販売するかによって区別されます。

  • 量り売り・・・お酒の液体のみを販売
  • 詰め替え・・・小分けにした容器ごと販売

量り売りは、液体としてのお酒そのものを商品として販売する方法で、お客様が用意した容器に、希望する量だけお酒を注いで販売します。

容器はお客様の所有物なので、量り売りは詰め替えの届出は不要です。

一方、詰め替えは、別の容器に移し替えた状態で新たな商品を作って販売します。

つまり、「お客様の容器に注ぐ=量り売り(届出不要)」「お店の容器で新商品を作る=詰め替え(届出必要)」という違いです。

同じように容器に移す行為でも、法律上の扱いが異なるため、注意が必要です。

酒類の詰め替えに届出が必要なケース

酒類販売を行う事業者の中には、大容量のお酒を小分けにして販売したいと考える方も多いです。

とはいえ、実際にどのような場合に届出が必要になるのか、具体的なケースを把握しきれていない方もいるのではないでしょうか。

適切な届出を行わずに詰め替え販売を始めてしまうと、後々トラブルになる可能性もあります。

ここでは、届出が必要となる具体的なケースについて詳しく解説します。

酒販店がギフト用やセット販売等に詰め替え販売するケース

酒販店が独自の容器にお酒を詰め替えて、「セット販売」や「ギフト商品」としてお酒を販売する場合に、事前の届出が必要になります。

これは、お客様の注文を受けてその場で詰めるのではなく、あらかじめ容器に詰めて商品棚に並べる行為が、詰め替え販売に該当するためです。

たとえば、地酒を小さなボトルに分けて「飲み比べセット」として販売したり、オリジナルデザインの瓶に詰め替えて「ギフト商品」として販売するケースなどが、典型的な例です。

このような販売方法で商品を提供する際は、必ず税務署に届出を行いましょう。

イベント会場等で一時的に詰め替えるケース

屋外イベントや期間限定の催事で、独自の容器にお酒を詰め替えて販売する場合も、届出が必要です。

たとえ数日間だけの短期営業であっても、詰め替え販売を行う以上は届出が必要です。

具体的には、カクテルやビールなどをイベント限定デザインのボトルに詰め替えて、未開封のお酒として販売するようなケースが該当します。

この場合、一般酒類小売業免許に加えて、期限付酒類小売業免許と、詰め替えの届出の3つが必要になる点は注意が必要です。

ただし、コップやグラスにお酒を注いでその場で提供する場合は、お酒の「販売」ではなく「提供」とみなされるため、酒類小売業免許や詰め替えの届出は不要です。

税務署への「酒類詰め替え届出」の提出期限と手順

詰め替えの届出は、詰め替えを行う日の2日前までに届出を提出しなければなりません。

例えば、金曜日に詰め替える予定なら、遅くとも水曜日には税務署の担当者に受理されている必要があります。

次に、「酒類の詰替え届出書」を1部作成します。

届出用紙は国税庁のホームページから無料でダウンロードできます。

書類には、詰め替えを行う場所や酒類の内容(酒類区分・数量など)などを記入します。

提出先は、販売場の所在地を管轄する税務署です。窓口へ持参しても、郵送で提出しても構いません。

ただし、郵送の場合は「投函日」ではなく「税務署で受理された日」が提出日になります。

締切直前に投函すると間に合わず、違反となるおそれがあるため、郵送する場合は余裕をもって早めに送付するようにしましょう。

詰め替え後の容器に必要な「ラベル表示」のルール

お酒を別の容器に詰め替えたら、その容器に必要な情報をラベルで表示しなければなりません。

元の容器から詰め替えると、もともと書かれていた商品情報が見えなくなってしまうからです。

お客さんが何を買ったのか分かるように、また未成年者の誤飲を防ぐためにも、新しい容器に情報を記載する義務があります。

具体的には、容器の見やすい場所に以下の情報を表示する必要があります。

ラベル表示に必要な項目

  • お店の住所と名前
  • 詰め替えた場所
  • 容器の容量(例:50ml)
  • お酒の種類(例:日本酒、焼酎など)
  • 「お酒は20歳になってから」などの注意書き
  • リサイクルマーク(プラスチック製の蓋などに必要。ガラス瓶本体は不要)

なお、ラベルの表示方法については「表示方法の届出書」を作成し、お酒を販売する前までに税務署に提出しなければなりません。

詰め替えには保健所の「酒類製造業許可」も必要

お酒を詰め替えて販売する場合、酒類販売業免許を持っているだけではできず、税務署への届出に加えて保健所の酒類製造業許可も必要です(食品衛生法第55条)。

なぜ、これだけ色々手続きが必要かというと、それぞれ異なる目的で管理されているためです。

酒類販売業免許は「お酒を売る免許」、税務署への届出は「お酒の流通管理と不正防止」、保健所の酒類製造業許可は「衛生管理」を目的としています。

たとえば、酒屋として通常のボトル販売を行っている事業者が、大きなボトルから小さなボトルに詰め替えて販売したとします。

この場合、すでに持っている酒類販売業免許に加えて、新たに「詰め替えの届出」と酒類製造業許可の2つの手続きが必要というわけです。

注意

ここで解説している「酒類製造業許可」は保健所に申請して取得する許可であるのに対し、酒税法の「酒類製造免許」は税務署に申請して取得する免許なので、両者はまったく別物です。

詰め替え販売における法的リスクと罰則

お酒の詰め替え販売を行う場合、法律で定められた手続きをきちんと守らないと、厳しい罰則を受ける可能性があり、最悪の場合は事業の継続が難しくなります。

具体的には以下の罰則を受ける可能性があるので注意してください。

お酒の詰め替え販売に関連する罰則

  • 詰め替えの無届(酒税法第58条)・・・1年以下の懲役または50万円以下の罰金
  • ラベルの非表示(食品表示法第20条)・・・1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
  • 酒類製造業の無許可営業(食品衛生法第82条)・・・2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金に処

さらに、これらの違反によって酒類販売業免許が取り消されると、お酒を売ること自体ができなくなり、事業継続が不可能になってしまいます。

そのため、お酒の詰め替え販売を行う場合には、必ず法律を守って、必要な許可や届出、表示のルールをしっかり確認したうえで進めるようにしましょう。

まとめ 

この記事のまとめ

  • お酒の詰め替え販売には届出が必要
  • お酒の量り売りは詰め替えの届出は不要
  • 量り売りは液体のみを販売し詰め替えは容器ごと販売する
  • お酒の詰め替えをするなら酒類製造業許可(保健所)が必要
  • 無届の場合には1年以下の懲役または50万円以下の罰金