
産業廃棄物の収集運搬について、「どのような行為が違反になるのか」「違反するとどのような処分を受けるのか」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
これから許可を取得する方だけでなく、すでに収集運搬業を営んでいる方も、違反事例を知っておくことは大切です。
産業廃棄物収集運搬業では、無許可運搬や許可範囲外の運搬、マニフェスト違反などが問題となり、違反内容によっては罰金や事業停止、許可取消しにつながります。
この記事では、実際に発生した違反事例8件と、罰則・行政処分の内容や違反を防ぐための対策を解説します。許可を取り消された事例も紹介するので、自社の業務を見直す際の参考にしてください。
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この記事を書いた人
NAGASHIMA行政書士代表。日本行政書士連合会 第20260604号。産廃業に強い行政書士。産廃業の許可に関するメディアサイト「産廃業許可ナビ」を運営しており、産廃業許可の取得率100%。詳しいプロフィールはこちら → [運営者情報]
産業廃棄物収集運搬の違反事例8選
産業廃棄物収集運搬業では、無許可運搬や許可範囲外の運搬、マニフェスト違反など、さまざまな違反が発生しています。
実際に、こうした違反によって行政指導や事業停止、許可取消しなどの処分を受けた業者もいます。
ここでは、実際に報道された事件や自治体が公表した違反事例の中から、8件を紹介します。
| 違反内容 | 地域 | 発覚した問題 |
|---|---|---|
| 無許可運搬 | 山梨県 | 必要な許可を受けずに建築廃材を運搬した疑い |
| 許可範囲外の運搬 | 東京都 | 許可範囲を超えた運搬とマニフェストの虚偽記載 |
| 無許可の積替え・保管 | 千葉県 | 積替え・保管を含まない許可で積替え保管を実施 |
| マニフェスト違反 | 長野県 | 管理票の回付・送付義務違反と無届の積替え保管 |
| 名義貸し | 東京都 | 他人への許可名義・車両の貸与とマニフェストの虚偽記載 |
| 無許可業者への処分委託 | 大阪府 | 無許可業者への処分委託による罰金刑の確定 |
| 不法投棄 | 東京都 | 不法投棄による罰金刑の確定 |
| 書類不携帯・記載不備 | 岡山県 | 許可証の写し不携帯やマニフェストの記載不備 |
違反が発覚した場合の処分は、違反内容や状況によって異なります。
また、書類送検されたからといって、有罪が確定したり、刑罰が科されたりしたわけではありません。
無許可で建築廃材を運搬した事例【山梨県】
2024年5月、山梨県南アルプス市の解体業者の社長らが、建築廃材を無許可で運搬した疑いを持たれた事例です。
産業廃棄物を他人から委託されて運搬する場合は、原則として産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
しかし、社長らは必要な許可を受けずに、大量の建築廃材を運搬した疑いが持たれました。
この事件では、社長らが廃棄物処理法違反の疑いで書類送検されました。
なお、排出事業者が自ら排出した産業廃棄物を運搬する場合は、原則として許可は不要です。詳しくは産廃の自社運搬の記事をご確認ください。
ただし、建設業の産業廃棄物収集運搬では原則として元請業者が排出事業者となるため、下請業者が建設廃棄物を運搬する場合は注意が必要です。
許可された事業範囲を超えて運搬した事例【東京都】
2026年8月、株式会社ジックスが、許可された事業範囲を超えて産業廃棄物を収集運搬した事例です。
産業廃棄物収集運搬業の許可を取得していても、許可された事業範囲を超えて運搬することはできません。
例えば、許可証に記載されていない産業廃棄物の種類を新たに取り扱う場合は、事前に変更許可申請をして許可を受ける必要があります。
しかし、同社は変更許可を受けずに事業範囲を超える収集運搬を行い、マニフェストにも虚偽の記載をしていました。
これらの違反により、東京都は同社の産業廃棄物収集運搬業許可を取り消しました。
許可を受けずに積替え・保管を行った事例【千葉県】
2024年12月、千葉県の株式会社ミライ工業が、許可を受けずに産業廃棄物の積替え・保管を行い、許可を取り消された事例です。
産業廃棄物を運搬途中で積替え・保管する場合は、原則として積替え・保管を含む産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
例えば、排出事業者から回収した廃棄物を自社の事業場に降ろし、後日まとめて処分施設へ運搬する場合は、積替え・保管に該当します。
しかし、同社は積替え・保管を含まない許可しか取得していないにもかかわらず、収集運搬を委託された産業廃棄物の一部を自社の事業場で積替え・保管していました。
千葉県は、事業範囲の無許可変更に該当し、情状が特に重いとして、同社の産業廃棄物収集運搬業許可を取り消しました。
マニフェストの回付・送付義務に違反した事例【長野県】
2025年12月、長野県の日本化材株式会社が、マニフェストの回付・送付義務などに違反し、60日間の事業停止処分を受けた事例です。
紙マニフェストを使用する収集運搬業者は、運搬終了後に必要事項を記載し、処分業者への回付や排出事業者への写しの送付を行う必要があります。
しかし、同社は排出事業者2者から引き受けた約3.7トンの廃塗料について、マニフェストを処分業者に渡さず、排出事業者にも写しを送っていませんでした。
さらに、過去5年間にわたり、必要な変更届を提出せずに、汚泥など約77トンを積替え・保管していました。
これらの違反により、長野県は同社の産業廃棄物収集運搬業と特別管理産業廃棄物収集運搬業について、60日間の事業停止処分を命じました。
他人に許可名義と車両を貸した事例【東京都】
2026年8月、東京都の株式会社新日本オゾンが、産業廃棄物収集運搬業の名義貸しなどを理由に許可を取り消された事例です。
産業廃棄物収集運搬業者は、自社の許可名義を使って他人に収集運搬業を営ませることは禁止されています。
例えば、許可を持たない別会社に自社の名義と車両を貸し、収集運搬業を行わせることは名義貸しに該当します。
しかし、同社は自社の許可名義と登録車両を他人に貸し、産業廃棄物の収集運搬業を行わせていました。
さらに、マニフェストにも虚偽の記載をしていました。これらの違反により、東京都は同社の産業廃棄物収集運搬業許可を取り消しました。
なお、許可業者の従業員が業務として運搬する場合など、他人が車両を運転すること自体が名義貸しになるわけではありません。
出典:東京都「産業廃棄物処理業者に対する行政処分について」(2026年8月3日)
無許可の処分業者に産業廃棄物を委託した事例【大阪府】
2026年3月、大阪府の株式会社葵総業が、無許可業者に産業廃棄物の処分を委託し、収集運搬業の許可を取り消された事例です。
産業廃棄物の処分を他社に委託する場合は、委託先が必要な産業廃棄物処分業許可を取得し、委託する廃棄物の処分が許可範囲に含まれている必要があります。
しかし、同社の役員は、請け負った解体工事などで発生した産業廃棄物の処分を、無許可業者に委託していました。
この違反によって会社と役員の罰金刑が確定し、欠格要件に該当したため、大阪府は同社の産業廃棄物収集運搬業許可を取り消しました。
なお、今回の事例は収集運搬の無許可営業ではなく、無許可業者への処分委託が問題となったものです。
不法投棄で収集運搬業の許可を取り消された事例【東京都】
2026年5月、東京都の株式会社H産業が、廃棄物の不法投棄を理由に産業廃棄物収集運搬業の許可を取り消された事例です。
廃棄物処理法第16条では、廃棄物の不法投棄が禁止されています。
また、不法投棄によって一定の刑罰を受けた場合は、欠格要件に該当し、産業廃棄物収集運搬業の許可取消しの対象となります。しかし、同社は廃棄物を不法投棄し、罰金刑が確定していました。
この罰金刑によって欠格要件に該当したため、東京都は同社の産業廃棄物収集運搬業許可を取り消しました。
許可証の写し不携帯・マニフェスト記載不備の事例【岡山県】
2024年6月、岡山県内で実施された産業廃棄物運搬車両の抜き打ち検査で、書類の不備が見つかった事例です。
産業廃棄物収集運搬業者は、運搬車両に許可証の写しを備え付け、紙マニフェストを使用する場合は必要事項を記載して携帯する義務があります。
しかし、里庄町と勝央町で実施された検査では、許可証の写しを携帯していない車両や、マニフェストの記載に不備がある車両が確認されました。
これらの不備により、計5台の車両が行政指導を受けました。
産業廃棄物収集運搬の違反による罰則・行政処分
産業廃棄物収集運搬業で法律に違反すると、拘禁刑や罰金などの刑事罰に加え、事業停止や許可取消しなどの行政処分を受ける場合があります。
また、違反内容によっては、収集運搬業者だけでなく、委託元の排出事業者も責任を問われる可能性があります。
無許可営業などの違反には拘禁刑や罰金が科される
産業廃棄物収集運搬業の無許可営業や名義貸しなどには、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります。
また、法人の場合は、違反内容によって最大3億円の罰金が科されることもあります。
主な違反行為と罰則は、次のとおりです。
| 違反行為 | 行為者への罰則 | 法人への罰金 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 無許可営業 | 5年以下の拘禁刑・1,000万円以下の罰金、または両方 | 3億円以下 | 第25条第1項第1号・第32条第1項第1号 |
| 事業範囲の無許可変更 | 同上 | 3億円以下 | 第25条第1項第3号・第32条第1項第1号 |
| 名義貸し | 同上 | 1,000万円以下 | 第25条第1項第7号・第32条第1項第2号 |
| 不法投棄 | 同上 | 3億円以下 | 第25条第1項第14号・第32条第1項第1号 |
| マニフェストの虚偽記載・写しの不送付・回付義務違反など | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 100万円以下 | 第27条の2・第32条第1項第2号 |
法人の業務に関して役員や従業員が違反した場合は、行為者本人だけでなく、法人にも罰金刑が科されることがあります。
なお、法人に対する3億円以下の罰金は、無許可営業や不法投棄などの一定の違反に適用されるもので、すべての違反が対象となるわけではありません。
事業停止や許可取消しで営業できなくなる場合がある
産業廃棄物収集運搬業者が法律に違反すると、事業停止や許可取消しの処分を受け、営業できなくなる場合があります。
事業停止は一定期間の営業を禁止する処分で、許可取消しは許可そのものを失う処分です。
主な違いは、次のとおりです。
| 項目 | 事業停止 | 許可取消し |
|---|---|---|
| 許可の状態 | 許可は維持される | 許可を失う |
| 営業への影響 | 指定された期間・範囲で営業できない | 対象となる許可で営業できない |
| 営業再開の条件 | 停止期間の終了など | 新たな許可の取得が必要 |
廃棄物処理法では、一定の違反があった場合に事業停止を命じることができ、欠格要件への該当など、法定の取消事由に該当する場合は許可取消しが義務付けられています。
実際に、長野県の日本化材株式会社は、マニフェスト違反などによって60日間の事業停止処分を受けました。
一方、東京都や千葉県では、許可範囲外の運搬や無許可の積替え・保管などについて、違反の情状が特に重いとして許可が取り消された事例があります。
また、廃棄物処理法違反による罰金刑の確定など、欠格要件に該当した場合も許可取消しの対象となります。
委託元(排出事業者)も罰則の対象になる
産業廃棄物の収集運搬や処分を他社に委託した場合でも、排出事業者には適正に処理する責任があります。
そのため、委託先が必要な許可を取得しているか確認し、委託基準やマニフェストに関する義務を守らなければなりません。
例えば、次のような場合は、排出事業者も罰則の対象となります。
産業廃棄物収集運搬の違反を防ぐためにやるべきこと
産業廃棄物収集運搬業の違反を防ぐには、許可の内容と実際の業務が一致しているか確認する必要があります。
特に、許可の有効期限や取扱品目、積替え・保管の方法、委託先の許可内容などにも注意が必要です。
また、マニフェストの管理や運搬車両の表示・必要書類についても、日常的に点検するようにしてください。
許可の有効期限・運搬地域・廃棄物の種類を確認する
産業廃棄物を収集運搬する際は、許可の有効期限や運搬地域、廃棄物の種類が実際の業務と一致しているか確認する必要があります。
主な確認項目は、次の4つです。
- 許可の有効期限: 許可が有効であり、必要な更新手続きが行われているか
- 運搬地域: 積込み地と荷降ろし地で必要な許可を取得しているか
- 廃棄物の種類: 運搬する産業廃棄物が許可証に記載されているか
- 取扱いの制限: 石綿含有産業廃棄物などが許可の対象から除外されていないか
例えば、大阪府で産業廃棄物を積み込み、兵庫県で荷降ろしする場合は、原則として両府県の許可が必要です。
また、廃プラスチック類の許可があっても、石綿含有産業廃棄物が「除く」とされていれば、石綿を含む廃プラスチック類は運搬できません。
そのため、石綿含有産業廃棄物が許可の対象から除外されている場合は、事前に変更許可申請を行い、石綿含有産業廃棄物を取り扱えるようにする必要があります。
積替え・保管を追加する場合は変更許可を取得する
積替え・保管を含まない産業廃棄物収集運搬業許可では、回収した産業廃棄物を運搬途中で降ろして一時保管することはできません。
そのため、新たに積替え・保管を行う場合は、事前に事業範囲の変更許可を受ける必要があります。
例えば、回収した産業廃棄物を自社の事業場に持ち帰って一時保管し、後日まとめて処分施設へ運搬する場合は、積替え・保管を含む産業廃棄物収集運搬業許可が必要です。
マニフェストと運搬車両の表示・書類を点検する
産業廃棄物収集運搬業者は、運搬車両への表示や必要書類の携帯、マニフェストの適切な管理を行う必要があります。
運搬前と運搬後に確認すべき項目は、次のとおりです。
| 確認のタイミング | 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 運搬前 | 車両表示 | 車両の両側面に事業者名・許可番号などを表示しているか |
| 運搬前 | 許可証 | 許可証の写しを携帯しているか |
| 運搬前 | マニフェスト | 紙・電子それぞれに必要な書類や情報を備えているか |
| 運搬後 | マニフェストの記載 | 運搬終了に関する必要事項を記載しているか |
| 運搬後 | マニフェストの回付・送付 | 処分業者への回付や排出事業者への写しの送付を行っているか |
| 運搬後 | 電子マニフェスト | 運搬終了報告を行っているか |
紙マニフェストを使用する場合は、許可証の写しとマニフェストを車両に備え付ける必要があります。
一方、電子マニフェストを使用する場合は、許可証の写しと電子マニフェスト加入証に加え、運搬する廃棄物の種類や数量などの情報を確認できるようにしておく必要があります。
まとめ
産業廃棄物収集運搬業では、無許可運搬や許可範囲外の運搬、マニフェスト違反などによって、罰金や事業停止、許可取消しなどの処分を受ける場合があります。
こうした違反を防ぐためにも、許可の有効期限や運搬できる廃棄物の種類、積替え・保管の可否を確認し、適切に業務を行いましょう。
特に、事業範囲を変更する場合は、事前に変更許可申請を行い、許可を受ける必要があります。現在の許可内容や運搬方法に不安がある場合は、早めに行政書士へ相談しましょう。
産廃業許可ナビでは、産業廃棄物収集運搬業許可の取得や変更許可申請に関するご相談を受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
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長島 雄太
NAGASHIMA行政書士事務所